風にそよぐ葦
A novel that follows a fallen landed family in Sardinia to explore tradition, modernization, honor, fate, and women’s lives. It renders attachment to the land and the strain of human relationships in a poetic yet grounded style.
Work Information
Like reeds in the wind, people bend and still go on living.
Set around an old landowning family in Sardinia, the novel lets decline, guilt, faith, and forgiveness meet in a slow arc. Through people bound to land and kin, it portrays the fragility of human beings before fate.
Book Information
- Publisher
- 三省堂書店/創英社
- Published
- 2025-08-28
- Pages
- 288 pages
- Size
- 2.5 x 12.7 x 18.8 cm
- ISBN-13
- 9784879233189
- ISBN-10
- 4879233188
- Price
- 1980 JPY
- Category
- 本/文学・評論
Canne al vento 初の邦訳‼ まさに苦闘そのものである人生だが、その最後に勝利するのは、愛と善の力である――グラツィア・デレッダ 17歳でデビューし、多くの作品を残した作家が、生涯、詩情のよりどころとした故郷イタリア・サルデーニャ島。そこに生きる人々の生活や問題をリアリズムとイデアリズムの見事な融合によって描き出したとして、1926年のノーベル文学賞を受賞。 代表作の本作は、特異な個性で存在感を放ち続けるサルデーニャ島への興味を激しく掻きたてる。島へ行ってみないではいられなくなる――。
グラツィア・デレッダ Grazia Deledda 1871年、イタリア・サルデーニャ島ヌーオロ生まれ。 学校は初等教育までで、短期間イタリア語個人教授を受け、多くの書籍を師に、独力で作家の道をきりひらく。17歳でローマの雑誌に最初の短編小説を発表。1900年、結婚してローマに移る。短編・長編小説など作品数は400を超える。 1926年度ノーベル文学賞受賞。1936年、ローマで死去。現在、最後の小説『孤独の教会』の舞台であるヌーオロの「孤独の教会」に眠る。 邦訳は『悪の道』『正直な心』『常春藤』『灰』など。 本訳の原著は『Canne al vento』(1913年刊)。
Reviews
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人としての生き方
イタリアらしい背景が上手く翻訳されている。
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現代人に読んでほしい小説。
物語の冒頭を印象づけるのは、魔物、妖精、さまよえる霊の幻想的な描写だ。人間や動物ではない“もの”たちと共生していた時代の物語なのだ。 例えて言えば、『となりのトトロ』でサツキやメイのそばにまっくろくろすけがいるような。 それに続いて、登場人物たちが簡潔に紹介され、現状が説明される。没落した貴族の三姉妹のもとに本土から、いわくのある甥がやって来る。何十年間も沈滞していた状況に一石が投じられ、物語が動き出すことを説明しきる素晴らしい冒頭だ。 そして、甥が足を踏み入れるのが、この物語の舞台となるサルデーニャ島。行ったこともない島なのに、読み進めていくうちに、その姿がありありと目の前に浮かぶ。 この小説は色に溢れているのだ。 花や草や木、野菜、果物、動物が常に鮮やかに描かれ、空や海や山が場面ごとに表情を変える。月の形と色をこれほど多彩に描き分ける小説が他にあるだろうか。 かといって、南の島の楽園のようではなく、大地は砂質の平原で火山石が散らばっており、そこには廃墟と化した城や屋根のないあばら家、墓地の跡が点在する。 荒れた大地の上に、人間の営みと自然が、明確なコントラストで提示される。そんな設定の中、物語は主人公の行動を軸に展開していく。 祝祭のシーンは一気に躍動し、物乞いの旅は陰鬱に語られ、メリハリは巧みにつけられるが、現代の小説のように滑らかには進行しない。 バランスを逸する程に描き込む場面もあれば、説明不足な描写もある。 だが、ここがこの小説の魅力である。 つまり、これは詩なのだ。 現代の小説は、“いたかもしれない”まっくろくろすけを冷静な計算や願望で描くのに対し、 『風にそよぐ葦』は魔物が本当にいた(物理的に存在したかどうかは別にして)時代にリアルタイムで書かれた物語で、サルデーニャの自然に全身全霊で向き合い、心情に真摯に従った作者が、物語を造形した結果、 作者の熱情がそのまま文字になっているのだと思う。 過酷に悲惨に描かれる登場人物のほぼ全員が過去に囚われ、現在に苦しんでいるが、 彼らを動かす力は愛なのだ。 必ずしも未来に向けた希望に溢れる愛ではなく、過去に対する愛であったり、神への愛も大きな位置を占める。 けれど、人が紡ぐ愛の物語なのだ。 スマホも自動車も電気もない時代、人間はこんなにも豊かなものに囲まれ、こんなにも豊かな心情に満ちていたのだ。 失ったものの大きさを痛感する。 ベートーヴェンの交響曲を聴いたような読後感を覚える小説である。