ナショナル・トランスレーション賞
ナショナル・トランスレーション・アワード
アメリカ文芸翻訳者協会(ALTA)が授与する文学翻訳賞。英語へのすぐれた文学翻訳に贈られ、詩部門と散文部門の2部門で毎年授与される。
- 創設年
- 1998
- 主催
- アメリカ文芸翻訳者協会(ALTA)
- カテゴリー
- 研究・翻訳・学術
- 選考方式
- 選考
- 受賞対象
- プロ
- 開催頻度
- 年1回
- 締切時期
- 3月頃
- 発表時期
- 10月頃
- 賞のステータス
- 活動中
説明
National Translation Award(NTA)はAmerican Literary Translators Association (ALTA) が英語への文学翻訳で優れた貢献をした翻訳者に毎年贈る賞。1998年創設。2015年以降は詩(Poetry)と散文(Prose)の部門ごとに授与される。受賞作は原語テキストの完全な評価を含めて選考され、受賞者はALTAの年次会議で紹介される。2023年時点で賞金は翻訳者に対してUSD 4,000。
賞品
- 主賞品
- 翻訳者に贈られる現金賞。2015年以降は詩部門と散文部門で個別に授与される。
- 賞金
- 4,000 USD
- 受賞作品・翻訳者のALTA年次会議での紹介
- 業界での認知・広報機会
選考情報
選考プロセス
| 段階 | 審査員 | 通過率 | 発表 |
|---|---|---|---|
| 応募受付・資格確認 | ALTA事務局による応募要件と資格の確認 | — | 該当者には事務局から通知。長短リストの有無は年次により異なる。 |
| 審査員パネルによる評価 | 通常3名程度の審査員パネル(翻訳者・研究者・作家等)による訳文と原文の評価 | — | 審査結果はALTA公式サイトおよび年次会議で発表 |
| 最終選考・受賞決定 | 審査員パネルの合議で最終受賞者を決定 | — | 受賞者はALTA年次会議およびALTA公式サイトで公表される |
選考基準
- 原文の芸術性(artistic force)を英語で再現しているか
- 訳文としての文学的完成度(consummate quality)
- 原文テキストの評価が十分になされていること(原文と訳文の比較)
- 未訳の現代作品や重要な初訳・再翻訳であることが評価される場合がある
応募のヒント
推奨
- 訳文と原文の両方を提出し、原文の出典(版元・刊行年など)を明記する
- 訳文としての文学性と英語での表現の完成度を高める
- 応募要項(フォーマットや締切)を厳守する
- 出版社情報や権利情報を正確に添付する
注意
- 機械翻訳をそのまま提出しない
- 原文や出版情報を省略しない
- 提出フォーマットを無視して不備のある状態で応募しない
審査員から
- 原文の芸術性をいかに英語で再現しているかを重視する
- 原文と訳文の関係が明確になる資料(注記や訳者解説)が評価されることがある
- 訳文の文体や語感の一貫性を大切にすること
関連の賞
- Lucien Stryk Asian Translation Prize
- Italian Prose in Translation Award (IPTA)
- Spain-USA Foundation Translation Award
- ALTA First Translation Prize
- ALTA Travel Fellowships
公式情報
https://literarytranslators.org/awards過去の受賞者
ピエール・アルフェリの詩集『And the Street』は、都市の断片や日常の観察を通じて言語実験を行う詩作である。断片的なイメージ、視覚的な配置、音像を用いながら意味生成を揺さぶる作品であり、翻訳ではリズムと語感の調整が重要となる。
マロシア・カスタルディの小説『The Hunger of Women』は、女性たちの欲望や貧困、連帯と葛藤をテーマに現代社会の問題を問い直す物語である。個人的な渇望と社会構造が絡み合い、ジェンダーや労働、家族関係を通じて人間ドラマを描出する。
イマン・メルサルの詩集『The Threshold』は、個人的な記憶と家族、移住や女性の経験を繊細に綴る詩群である。日常の細部と歴史的記憶が重なり合い、言葉の断片性を通じて声の多層性を提示する。翻訳は声色とリズムの忠実な再現を目指す。
Thuậnによる小説『Chinatown』は、チャイナタウンという都市的舞台を背景に、移民や商業、文化的摩擦の中で揺れる人々の日常と関係性を描く。周縁に生きる登場人物の視点を通じて都市の歴史や記憶、連帯と疎外の問題を浮かび上がらせる作品である。
ダンテの叙事詩『煉獄篇』の英訳。魂の浄化と悔悟の旅路を描き、罪と贖罪、希望と倫理の問題を扱う作品。象徴的かつ神学的な言語構造が特徴であり、翻訳は語義・韻律・宗教的含意のバランスを問われる困難な仕事である。
カール・オーヴェ・クナウスゴールの長編『The Morning Star』は、家族や個人の記憶、暴力と孤独をめぐる内省的な物語。日常と破局のすき間を丹念に掘り下げ、内面の流れと社会的文脈を交差させる叙述が特徴。翻訳は語りの細部とリズムの再現を試みる仕事である。
ウィリアム・ウングァレッティの詩集『Allegria』は、短詩を通じて戦争や喪失、生命の脆さと瞬間の輝きを描き出す。断片的なイメージと音のリズムを用い、言葉の余白で存在の深みを照射する作品で、翻訳では詩の音韻と間(ま)の再現が重要になる。
ムンバイを舞台にした短編集。街角の小さな出来事、職業や恋愛、孤独といった日常の断片を通して都市に生きる人々の機微を繊細かつユーモラスに描く。カイキニ特有の口語や地域性を生かした語り口を翻訳で英語に再現する試みが評価された作品。
キム・イーデュムの詩集。身体や女性性、都市の不条理や抑圧を鮮烈なイメージで表現する先鋭的な詩群で、共同訳は原詩の生々しさと強度を英語で伝えることを目指している。
詩の翻訳を手がける翻訳者。韓国現代詩の英訳プロジェクトなどに関わる。
キム・イーデュムの詩集。身体や女性性、都市の不条理や抑圧を鮮烈なイメージで表現する先鋭的な詩群で、共同訳は原詩の生々しさと強度を英語で伝えることを目指している。
韓国語詩の英訳に携わる翻訳者。共同訳の一員として作品の言語的ニュアンスを英語へ移す役割を担った。
キム・イーデュムの詩集。身体や女性性、都市の不条理や抑圧を鮮烈なイメージで表現する先鋭的な詩群で、共同訳は原詩の生々しさと強度を英語で伝えることを目指している。
韓国現代詩の英訳に参加した翻訳者。詩のイメージとリズムの再現に重点を置く共同翻訳チームの一員。
マリー・ンディエの小説『La Cheffe』の英訳。料理や職業を通して移民やジェンダー、労働の問題を鋭く描き、主人公の内面と社会的緊張を浮かび上がらせる。翻訳は原作の皮肉と鋭さを伝えることを志向している。
フランス語圏の文学を英訳する翻訳者。現代フランス語作品の翻訳で知られる。
エルシ・ソティロプーロスの小説の英訳。個人の記憶や家族史を通して、ギリシャ社会の変動と個人の喪失感を繊細に描く作品。訳は語りのトーンと文化的文脈を英語読者に伝えることを重視している。
ギリシャ語文学の翻訳と研究に携わる翻訳者・研究者。ギリシャ現代文学の英語紹介を行っている。
アダム・ミツキェヴィチの叙事詩『Pan Tadeusz』の英訳。19世紀ポーランドの貴族社会や自然、愛国心を叙情的かつ叙事的に描く国民的名作。翻訳は原詩の抒情性と形式美を英語で再現しようとする試みである。
ポーランド語や他言語の文学翻訳で知られる翻訳者・詩人。詩の韻律や抒情性を英語で再現することに定評がある。
マティアス・エナールの小説『Compass(原題:Boussole)』の英訳。東西の文化・歴史・情熱が交錯する長い独白を通じて、知識と欲望の緊張を探る作品。訳は原作の細やかな語りと歴史的参照を丁寧に再現している。
フランス語文学の英訳で著名な翻訳者。多くの現代作家の作品を英語に紹介している。
ウルスラ・アンドキャー・オルセンの実験的な詩集。断片的なイメージと音楽的な語りを通じて都市・身体・テクノロジーなど現代の心象を探る。訳は詩の音や構造を生かすことを重視している。
デンマーク語の詩を英訳する翻訳者。詩の音韻や構造を重視した訳作業で知られる。
アントニオ・ディ・ベネデットの代表作『Zama』の英訳。植民地期の小さな官吏ザマが昇進を待ち続ける中で経験する孤独と時間の停滞を描き、存在の不条理と歴史的背景を照らす作品。訳は原文の静謐な緊張感を残すことを意図している。
スペイン語文学の翻訳者・学者。アルゼンチン文学などの英訳で知られ、原語の文化的文脈を踏まえた訳作業を行う。
ガロ・ギリオットの詩集。暴力や自然、歴史的記憶が入り混じる鮮烈なイメージでラテンアメリカの現実を表現する。翻訳は原語の強度とリズムを保ちつつ英語圏の読者へ新たな詩的感触を届ける。
アメリカの詩人で翻訳者。政治的・社会的テーマを扱う詩作と、ラテンアメリカ作品の英訳で知られる。
アントニオ・タブッキの作品を英訳した作品。個人の記憶やアイデンティティ、時間の経過を繊細に描き、人物の内面と歴史的背景が交錯する文学作品。訳は作者の文体的特徴を丁寧に伝えることを志向している。
イタリア語から英語への翻訳に携わる翻訳者。現代イタリア文学の翻訳で活動している。
アンジェリカ・フレイタスの詩集。日常の観察や身体、フェミニズム的視点、言語遊びを融合させた詩群で、ユーモアと皮肉を伴いながら現代社会の断片を鮮やかに切り取る。訳は原詩のリズムと機知を英語で伝えることを目指している。
ポルトガル語圏の詩を英訳する翻訳者。詩のリズムや機知を英語で再現することに注力している。
イブラヒム・アル=コーニのサハラを舞台とする小説の英訳。遊牧民やトゥアレグ文化の世界観、自然と精神性の交錯を詩的に描き出す原作の感性を英語で伝え、文化的文脈の再現が評価された。
翻訳者。イブラヒム・アル=コーニの作品を英訳し、2015年の散文部門National Translation Awardを受賞した。
ポール・ツェランの詩を収めた英訳。言語の断片化や沈黙、記憶と喪失をめぐる詩的探究が特徴で、原詩の難解さを保持しつつ英語で詩的音感と暗示を再構築する翻訳が高く評価された。
詩人で翻訳者。ポール・ツェランの詩集の英訳により、2015年の詩部門のNational Translation Awardを受賞した。
ヴヴェデンスキーの詩と散文を収めた英訳詩集。ロシア・アヴァンギャルド特有の言語遊戯や断片的構成、不条理なユーモアを含む原作の実験性を、英語で再現しようとする翻訳の創造性が評価された。
ロシア語圏文学の翻訳・詩作で知られる詩人・翻訳者。アレクサンドル・ヴヴェデンスキーの作品の英訳で共同受賞した。
ヴヴェデンスキーの言語実験的な詩篇と断片的テクストを英語に移した詩集の翻訳。原文のリズムや語の遊びを英語で捉え直す努力が評価され、翻訳上の挑戦を共有する共同訳として受賞した。
ロシア語から英語への翻訳者。オスタシェフスキーと共同でヴヴェデンスキーの翻訳を行い、本賞を受賞した(詳細情報は限定的)。
ヘルタ・ミュラーの長編の英訳。ソ連の強制収容所に送られた主人公の経験を通じて、トラウマと記憶、言語の限界を描き出す作品であり、翻訳は断片的な語りと象徴性を英語で再現する点が評価された。
ドイツ語圏文学の翻訳者・演出家として知られる翻訳者。ヘルタ・ミュラーの長編英訳で本賞を受賞した。
マフムード・ダルウィーシュの詩集の英訳。亡命と喪失、故郷への想起を象徴的なイメージで綴る詩群を、原詩の音感と比喩をできる限り保持して英語に移植する翻訳が高く評価された。
イラク出身の詩人・翻訳者・学者。マフムード・ダルウィーシュの詩集の英訳で本賞を受賞し、中東文学の翻訳で知られる。
フアン・ヘルマンの詩を収めた詩集の英訳。政治的暴力や追放、個人的喪失といった主題を扱う詩群を、原詩の緊張感と情感を保ちながら英語に移し替える翻訳が評価された。
詩の英訳に携わる翻訳者。フアン・ヘルマンの詩集の翻訳で本賞を受賞した(詳細情報は限られる)。
ペトラ・フーロヴァの小説の英訳。個人の内面と社会の変化を絡めながら、家族関係や自己認識の揺れを描く作品で、チェコ語特有の語り口や細やかな心理描写を英語で再現する翻訳が評価された。
チェコ語から英語への翻訳を手がける翻訳者。ペトラ・フーロヴァの小説の英訳により本賞を受賞した。
中世から現代までのフランス女性詩人の作品を編んだアンソロジーの英訳。女性特有の視点や社会的制約の変遷、個人的表現の多様さを紹介し、各時代の詩的特徴を英語で伝えることに重きを置いた翻訳である。
英訳翻訳者。九世紀にわたるフランス女性詩人を編んだアンソロジーの翻訳で受賞(詳細は公表資料が限定的)。
コルネイユなどの古典フランス戯曲を英訳した作品集。17世紀演劇の詩的リズムやドラマ性を現代英語に置き換え、舞台上での可読性と原作の言語的美しさを両立させる翻訳技術が評価された。
アメリカの詩人で翻訳者。フランス古典戯曲の英訳によって、その詩的な語感と舞台性の再現が高く評価された。
デュレンマットの短編・戯曲・エッセイを収めた選集の英訳。正義や罪、不条理に対する鋭い観察と暗いユーモアを持つ原作の力を、英語で読みやすく再構築しつつ原文の哲学性を伝える翻訳が評価された。
アメリカの翻訳者・作家。ドイツ語圏文学の英訳で知られ、フリードリヒ・デュレンマットの作品を集めた選集の英訳で本賞を受賞した。