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ドリナの橋 (東欧の文学)

ノーベル文学賞

ドリナの橋 (東欧の文学)

イヴォ・アンドリッチ

ヴィシェグラードのドリナ川に架かる橋を軸に、16世紀から第一次世界大戦までの町の歴史をたどる大河小説。橋は帝国の交代、宗教や民族の交錯、日常の営みのすべてを見守る証人として機能する。

歴史小説ボスニア帝国記憶

作品情報

一本の橋が、町の記憶と歴史を何世紀にもわたって見つめつづける。

『ドリナの橋』は、一本の橋を通して町の暮らし、支配の移り変わり、共同体の揺らぎを見渡す作品である。巨大な歴史の流れを背景にしながらも、個々の生活感覚や会話の積み重ねが物語を支え、長い時間の厚みを感じさせる。

書籍情報

出版社
恒文社
発売日
1966-09-20
ページ数
364ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784770402202
ISBN-10
4770402201
価格
20779 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/ロシア・東欧文学

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レビュー

  • 新品同様でした!

    とても良い状態で、新品同様で感動しました。有り難うございました。

  • ノーベル文学賞の名作

    橋のたもとの町(旧ユーゴスラビア)の人間模様です。 オスマン帝国時代に橋ができてからボスニア紛争で破壊されるまでの時代の変化を追って書かれています

  • 時代も何も超越した存在として

    シラー以来の文学的な感動かもしれない。言葉による表現の最高地点がここにあるのではと思えるほどである。人々の営みや橋の周りで起こる現象、それらを取り巻く時代の巨大なうねりも、幾重にも重なった言葉の表現によって、その裏に潜む想像もしなかった様相が新たになり、読書は奥へ奥へと引き込まれていく。アンドリッチの驚異的な筆力と訳者の技量を感じる。そして、本書の視座は数百年をかけた時代にあり、トルストイの『戦争と平和』のような重厚さを持ち、長い時間の流れのどこも希薄にせずに紡がれていく。 ドリナの橋の上で時代時代の人が人生を繰り広げ、時に人の命を奪っていく。滔々と流れるドリナの川と時代の変化にも揺るぎない不動の橋は、普遍の象徴としてあまりにも寡黙に無感情に人間の死を見つめ、残酷さすら感じる。人々はそれでも橋を愛しながら自分の生を生き、エネルギーに任せて生活を送り、また社会の変化によって家族の不幸を抱えたり、時代から取り残され老齢の不遇を生きる。様々な人間の生のありのままが、細かい心の動きとともに描かれる。名もなき人々に名前を付し人格と人生が与えられ、それぞれが橋と生きる主人公として登場する。男女の恋、結婚、その破綻、信仰、商売、没落、生活の退廃、庶民感覚、圧政とその中の人々、暴力と狂気、心の破綻、戦争と恐怖、新旧思想とその狭間に揺れる信条、伝統と科学、庶民の意志、不屈の精神、ありとあらゆる人の生が描かれている。あらゆるものが無数の人生を通して現れるが、それらはバラバラに散逸せず、ドリナの橋がひとつに収束させていく。巨大な時代のうねりは残酷に人を不幸に陥れもするが、普遍的な存在である橋がその側で寄り添い、人の死さえも揺るぎなく支えているようである。 橋の上で、無実のまま処刑されたり、他者の主張に抗えないために自ら命を絶ったり、圧政に不屈に立ち向かいむごい刑に処されたり、そこには死が付きまとっていた。ある道化の純朴な者が仲間に狂気の中はやされ侮辱され、ドリナの橋の凍った手すりを歩いてみせる場面がある。私は読みながら、この登場人物も過去の幾つかの死と同じように、ドリナ川の淵に飲み込まれるのだと戦慄した。橋は揺るぎないが、そのすぐ下では濁流が渦巻き人を死に導く、危うく不安定な存在である。私は純朴さからこの人物には生き残って欲しいと願った。私もこの人物と同じように手すりの上で生と死の間を行き来した。生の希望と死の諦めがそこにあった。彼の勇姿の果てに何が待つのか。そしてその結末には思わず感極まってしまった。 本書が刊行されて約半世紀後に、このユーゴスラビアでは聞くも恐ろしいジェノサイドが起こってしまった。本書に登場するようなどこか健気で素朴なイスラム教徒が捕虜とされ欺かれ虐殺され、女性は暴行を受けた。民族主義として自己を特殊化して優勢にとらえ他者は人を人として扱わず排除する、短絡的で自分勝手で残忍な思想。本来は自らの立場や価値を再認識して、困難な境遇から奮い立つためのその主義は、一面だけ残して凶暴化し、欲望と無思慮に従い悪用された。アンドリッチがまだ生きていればこの忌まわしい惨劇をどのように描いただろう。ドリナの橋はこの人間の変容をどのように眺めただろう。ドリナの橋は第一次世界大戦の騒乱と混迷をも傷つきながら見つめたが、ジェノサイドという集団狂気の結末を黙して包み込むことができただろうか。本書でも宗教に沿った民族主義のようなものは登場する。しかしそれは、宗教を超えて共に過ごすドリナの橋近郊の人々、つまりトルコ系ムスリムにとってもセルビア系キリスト教徒にとってもユダヤ人にとっても、見通しのきく平穏な生活を破壊するものとして扱われる。故郷の文学に狂気を乗り越える術があったのである。

  • 大河の流れのように、とうとうと

    ボスニアとセルビアを結ぶドリナの橋を舞台に300年以上にわたり繰り広げられる人間模様を描く大河ドラマ。疲れることなく、高ぶることのないアンドリッチの語り口に身をゆだね、長編をいつの間にか読みきってしまった、という表現が正しいだろう。 大洪水、戦争などの苦難、複雑な民族宗教構成にある人々の反目と協力の歴史の中(これは現在のバルカン地域も変わりない)、ドリナの橋はいつもそこにありつづけた。その姿を見るにつけ、ヨーロッパという土地を貫く歴史の重み、堅牢さを思わざるをえない。その橋も1914年の第1次大戦勃発の年、爆破され長い生涯を終えることとなる。ヨーロッパの「歴史の終わり」を象徴する出来事として、いつまでも心に残るラストだった。 アンドリッチは「ドリナの橋」!!をはじめとするバルカンの歴史を題材にした長編小説を残し、旧・ユーゴスラビアただ一人のノーベル文学賞を受賞した。

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