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闘牛の影 (岩波少年文庫 3144)

ジョン・ニューベリー・メダル(ニューベリー賞)

闘牛の影 (岩波少年文庫 3144)

Maia Wojciechowska

スペインの小さな町で、名闘牛士だった父の影を背負う少年マノロが、周囲の期待と自分の恐れのあいだで揺れる。闘牛の継承をめぐる葛藤を通して、勇気とは何か、他人の望みではなく自分の生き方を選ぶとはどういうことかを描く。

成長物語勇気父と子の継承自己決定闘牛スペインの町

Work Information

父の期待と自分の恐れのあいだで、少年は自分の道を選び取ろうとする。

1965 年ニューベリー賞受賞作。亡き父と同じ闘牛士になることを期待される少年マノロが、恐れと期待のはざまで自分の進路を見つけようとする。スペインの町の空気、父子の影、勇気の意味が、抑えた筆致で重なっていく。

Review Summaries

  • 短いページ数ながら物語の引きが強く、少年の選択と成長が最後までまっすぐ伝わってくると評価されている。闘牛の描写よりも、恐れを抱えたまま自分の道を見つける過程に魅力があるという受け止め方が多い。

  • 父の記憶が伝説へ変わっていく中で、少年が自分の勇気を見つけていく過程が、哀感のある調子で印象づけられると受け取られている。闘牛場の外側にある心理の揺れを丁寧に追う点が支持されている。

Book Information

Publisher
岩波書店
Published
1997-01-16
Pages
224 pages
Language
日本語
ISBN-13
9784001131444
ISBN-10
4001131447
Price
61 JPY
Category
本/文学・評論/文芸作品/英米文学

マノロが顔も覚えていない父は,スペインのその町に銅像が立っているほど有名な闘牛士だった.自分の臆病さに気づき,周囲の期待を裏切ることを恐れつつも自らの道を必死に探る少年の物語.

Reviews

  • 自分に正直に生きる勇気

    ポーランド出身でアメリカで活躍した女流作家マヤ・ヴォイチェホフスカの作品です。 物語の舞台は闘牛を愛するスペインの街<アルカンセル>。主人公の少年マルロは、夭折した偉大な闘牛士である父親の一人息子として生まれ、容姿が父親によく似ているためもあって周囲から闘牛士となることを期待されています。しかしマルロは、自分に期待し面倒をみてくれる皆を失望させたくはないと思いながらも、自分が闘牛士として生きる情熱と勇気に欠けていると心ひそかに感じていました。彼は、自分が本当は何ものであるのかを知りたいと願い、闘牛士としての初舞台を踏むことになっている12歳の<牛ためし>の日まで、必死に<自分>を知ろうともがきます。 本書は、子どもが大人になるときに<自分は何者であるのか>を探すことの必要とその発見までの心の揺れと苦しい過程を描き、苦悩の果てで一度その答えを見たならば<それが例え困難であっても自分に正直に生きる勇気>について考えさせられる作品であります。こうした勇気なくして、人間が幸福になることは恐らく不可能でありましょう。 本書を20代後半という年齢で読んでみて、よき大人の存在とその助けが、混沌とした青年への入り口で自分らしい生き方、進むべき一筋の道を探してもがいている少年たちにとっていかに大事なものであるのか、ということを感じました。 作中には、気が優しく真面目なマルロをむしろ混乱させ追い詰める大人も沢山出てきます。父を亡くしたマルロは父親から助言を受けることはできないというハンデがありますが、心温かく賢い母親と、物語の最後で満を持して姿を現す慧眼の批評家カスティーリョさんの助言を得ることができました。それらの言葉が、マルロに自分らしく生きることを決意させる大きな助けとなるのです。こういう大人がマルロの傍にいてくれて本当に良かったと思います。 ロシアの作家アイトマートフ氏は幼いころスターリンによる弾圧の為に父君を亡くされた方ですが、その時に学校のある先生が言ってくれた「君は自分の父親の名前を聞くとき、目をふせてはいけない」という一言が、自分を救ってくれたと話されていました。その激励は当時非常な危険を冒しての一言でありました。心揺れる子どもにどんな言葉を掛けるのか−−大人の言葉は子どもにとって時に決定的な影響力を持つことを忘れてはならないと思います。 ただ、文学作品として生意気にも注文を付けさせてもらえば、独特の世界観というものを余り感じないというか、世界観を支える個性的な言葉選びや人物ディテールの書き込みが足りないような印象がありました。児童文学でも例えば『ドリトル先生』等は世界観とキャラクターの作りこみが抜群の作品だと思います。また、ユーモアの質と量も印象の弱さに関係しているかもしれません。 ともあれ、「こうなって欲しい」という大人のエゴではなく、その子ども自身の幸福の為に、子どもと向き合い言葉を掛けていく心構えの大切さを、改めて教えてくれる作品でした。 文章は読みやすく、さっと読了できます。中学生位の子にもぜひ読んでもらいたい一冊です。

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