作品情報
20世紀前半の山東農村を舞台に、家族と村社会の物語を通じて暴力、性愛、抵抗、生活のたくましさを描く長編。民間伝承と魔術的な要素を融合させた叙述で、歴史の暴力と民衆の生命力を力強く表現する代表作。
書籍情報
- 出版社
- 岩波書店
- 発売日
- 2003-12-17
- ページ数
- 320ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784006020798
- ISBN-10
- 4006020791
- 価格
- 1254 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/中国文学
婚礼の輿が一つ,赤に染まる高粱畑の道を往く.輿に揺られる美しい纏足を持った少女.汗に濡れ輿を担ぐ逞しい青年.中国山東省高密県東北郷.日本軍が蛮勇を振るうこの地を舞台に,血と土,酒に彩られた一族の数奇な物語が始まる.その名「言う莫れ」を一躍世界に知らしめた,現代中国文学の旗手の代表作.
莫 言(ばくげん) 1955年、中国山東省生まれ.人民解放軍入隊後、執筆活動を開始.1987年に発表した本作品『紅高粱家族』は内外の文壇で高く評価された.現代中国文学の到達点を象徴する作家である.邦訳された作品に『酒国』『豊乳肥臀』『白檀の刑』などがある.
レビュー
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面白い
"高粱の穂が砥石のように平らな面をなしてどこまでもつづいていた。高粱たちはじっとしている。高粱の穂はどれもまっ赤に熟した顔を見せていた。ありったけの高粱が集まって壮大な集団となり、大度の思想を形成する"1987年発刊の本書は中国籍作家として初のノーベル文学賞受賞者による抗日戦争下のある一家と周辺の人々をめぐる物語。 個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。 さて、そんな本書は五つの章から成る長編作品のうち「赤い高粱《紅高粱》」「高粱の酒《高粱酒》」の二章が収録されており、著者の故郷である山東省高密の農村を舞台として、日本軍、国民革命軍、八路軍、匪賊が激しい勢力争いを繰り広げる抗日戦争下の時代を中心に『ある一家と周辺の人々』をめぐる1923年から1976年までの出来事を語り手の「わたし」が、自身の父(豆官)、祖父(余占鰲)、祖母(戴鳳蓮)らの事績を村の老人等から聞き取って語るといった形式で描いているのですが。 著者の作品は初めて手にとったのですが。日本軍の自動車隊を待ち伏せ攻撃、祖母(戴鳳蓮)ほか、多大な犠牲者を出しながら勝利する第一章。時代が遡って、祖母(戴鳳蓮)の若かりし嫁入りの場面から造り酒屋の女主人として逞しくのしあがる第二章。と、語り口は『百年の孤独』のガルシア=マルケスを彷彿させるものの、意外にエンタメ度が高く読みやすかったです。 一方で、抗日戦争下。仕方がないとはいえ中国側から描かれる日本兵(日本鬼子)の残虐さ、また殺された後の扱いの酷さ。またハンセン病への差別的な扱いには胸が痛みます。 1980年代に中国文壇で起こったルーツ探究運動の中で生まれた一冊としてオススメ。
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中国作家の限界を見る思い......
「赤い高粱一族」という全5章から成るある一族の大河小説(作者曰く伝奇小説)の冒頭2章を収めた作品。主人公(=わたし)の祖父の1930年代の抗日活動の描写から始まり、以下、その妻(=主人公の祖母)の回想を含む祖父母の若き日々(1920年代)と冒頭の抗日活動の続きとが交互に描かれる。時間軸の縦横振りが中南米の作家の影響を受けていると称されている所以であり、当時の中国の農村の人々の生活振りが糞尿、尻、屁と言った卑俗な言葉遣いを多用して描かれている点がチャイニーズ・リアリズムと称されている所以であろう。普段馴染みのない中国作家の作品に触れたという点では意義があった。 ただし、読んでいて感心しない点が幾つもあった。まず、主人公の祖父母が余りに立派に描かれ過ぎているのである。若き日の祖父は大志を抱いた胆力と知略のある若者として描かれているし、その後は抗日活動の英雄である。それにも増して、祖母への賛美は凄まじい。16歳までは殆ど家を出た事がないと明記されるいるにも関わらず、嫁いだ先の酒屋で義父と(初めの)夫の死後、すぐに大家を切り盛りしたり、芸術の才を発揮したりと、これまた美貌と知性と胆力に恵まれた理想の女性として描かれており、感情移入を拒む書き振りである。身内礼賛と英雄崇拝の嵐である。 リアリズム的描写にしても、作者としては哄笑を狙った由だが、そこまで昇華されているとは思えず、単なる猥雑感しか覚えなかった。何よりの問題は、本作が共産主義思想に覆われているのではないかという疑念である。毛沢東の語録が引用されていたり、「あのような(毅然とした)行動は共産主義者にしか取れない」といった言辞が出て来る。作者自身の思想なのか、当局の検閲を恐れての事なのか判然としないが、いずれにしても中国作家の限界を見る思いがした。
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ノーベル文学賞作家の作品です。
本当は中国語で読めるのがよいのでしょうが、中国の歴史や文化等をもう少し勉強してもう一度読みたいと思います。
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入手困難な本も在庫あり!
一言で表現すると素晴らしいに尽きます。 出版年が古くブックオフや専門書店の東方書店ですら在庫がなく、手に入らないかと諦めていたところ、こちらを見つけました。 ある程度の傷や汚れを想像していましたが、届いた実物を見たらとにかく美本で驚きました。梱包も雨や落下などによる衝撃に耐えられるよう丁寧に施されていました。 注文から発送までのスピードも早かったです。 本当にありがとうございます。
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赤い高粱一族の伝説
中国のノーベル賞作家で、魔術的リアリズムの作家だということで読みました。でも正直、この1冊に収録された2編からはガルシア・マルケスというより中上健次やフォークナーに近いものを感じました。幻覚的要素は比較的少なく、語り手の主人公の祖父母の時代の土地に伝わる血族の誇張された伝承を伝え聞き、書き起こしたといった趣だからです。 あと解説で莫言本人の言葉が載っていますが、これは故郷の土地の伝説であって、時代が戦時中なだけで反日の作品ではありません。その証拠に別の作品では、ドイツによる占領時代を描き、また別の作品では幼児の肉を食らうという巨悪の共産党幹部を追撃する作品も書かれています。 血のごとく赤いコーリャンの海に囲まれた、神話的な土地に生きた人々の伝説として素直に読むと、中上健次さんの作品や遠野物語のようでとてもおもしろいですよ。 あと若かった頃の祖母の人物造形がとても魅力的に感じました。
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残虐なまでの命の収奪を描くことで,にじみ出るほどの生きる本能がひしひしと伝わる傑作作品
莫言の作品は,間違いなく面白いです。 本作においても,猥雑かつ残酷なシーン,糞,小便,屁などの品の悪い言葉が頻出するが,それだからこそ, 「生きているんだ」という強烈な生命力,生きるための本能の力強さといったものが,文体からひしひしと伝わってくるのだ。 そして,物語が進むにつれて,時代が前後に錯綜し,登場人物それぞれの過去が次第に明らかになっていくスタイルが, この「赤い高粱」ですでに完成されている。 ところで,本書の原題は「赤い高粱一族」という全5章仕立ての作品で,本書は,そのうちの前の2章が収録されている。 残りの3章(「第3章犬の道」「第4章高粱の葬礼」「第5章犬の皮」)は,なぜか文庫化されておらず,単行本も絶版のためマーケットプレイスで高値がついている。 それぞれの作品が独立した連作であり,前の2章だけでも十分物語りとして完結しているためか, または,一説によると,最初の2章に比べできが良くないためか,実際のところ文庫化されないその理由は分からないが, やはり,前半部分だけ文庫化という中途半端なことで終わらず,ぜひとも後半部分も文庫化し,読者に判断をゆだねるべきではないだろうか。 ps.2013年,続編ようやく出ました。雰囲気が少し違った感じがしますが,なかなかよかったですよ。
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莫言。
文章が華美的で、若干疲れます。 第一章は確かに名作かなと。任副官と余司令の場面は印象的。第3章の、豆官と日本軍の場面もよいです。しかし、人に薦めるかというと、悩む。はじめて読む中国文学なら、やめたほうがいいと思います。
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高粱を擬人化した異界物語
著者が文学賞を受賞したころは、反日暴動が盛んな時に重なります。 同賞受賞の先輩を留置しながら、新聞・TVなどで歓迎報道されたことに疑問を感じた。 実際読み終えると、自然の中の1生物としての人間の営み(喜怒哀楽、色道、殺戮など等)を、 「これ程までに」と思うほど緻密に生臭く描かれており、ときには現実を失いそうになった。 そして歓迎報道の意味が否応なしに納得できた。 序文から70ページ余りと最終章にも「小鬼子=日本兵」への憎悪が満ち溢れているのだ。 文学的には素晴らしいが、いくばくか気分が悪くなった。
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