世界・海外・国外の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)

エドガー・アラン・ポー賞

郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)

ジェームズ・M・ケイン

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』は、偶然の出会いから犯罪へ滑り落ちる男女の危うい関係を描いたハードボイルド・サスペンス。欲望と不信が物語を急速に追い詰める。

ハードボイルド犯罪欲望破滅サスペンス

作品情報

欲望が、日常を一気に犯罪へ変えていく。

日本語版を確認。単独の紙書籍として流通している代表的な犯罪小説。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2014-08-28
ページ数
226ページ
言語
日本語
サイズ
14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-13
9784102142035
ISBN-10
4102142037
価格
539 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

フランクは豊満な人妻と組んで亭主殺害を計画するが……。 映画化7回、邦訳6回のベストセラーが新訳で登場。 何度も警察のお世話になっている風来坊フランク。そんな彼がふらりと飛び込んだ道路脇の安食堂は、ギリシャ人のオヤジと豊満な人妻が経営していた。ひょんなことから、そこで働くことになった彼は、人妻といい仲になる。やがて二人は結託して亭主を殺害する完全犯罪を計画。一度は失敗するものの、二度目には見事に成功するが……。 本文より 「問題があるかないかなんて誰にわかるの? あんたとあたし以外に?」 「おまえとおれか」 「そうよ、フランク。それがすべてじゃないの? あんたとあたしと道ゆきなんかじゃない。ほかの何物でもない。ただあんたとあたし。それがすべてよ」 「やっぱおまえって性悪猫みたいだな。そうじゃなかったら、おれもこんな気持ちになるわけないもん」 「それをふたりでやるのよ。キスして、フランク。口にキスして」 おれはキスした。彼女の眼がふたつの青い星みたいに輝いた。まるで教会にでもいるみたいだった。…… ジェームズ・M・ケイン M.Cain,James(1892-1977) 米国メリーランド州アナポリス生れ。父親は大学の学長、母親はオペラ歌手というインテリ家庭に育ち、少年時代にはオペラ歌手をめざした。ワシントン・カレッジで修士号を取得し、第一次世界大戦従軍をはさんでジャーナリストとして活躍。1931年にハリウッドに移って映画脚本を手がけつつ、小説を執筆。1934年『郵便配達は二度ベルを鳴らす』で長編デビューを果たし世界的大ベストセラーに。他に『殺人保険』(1943年)など著書多数。 田口俊樹 1950年、奈良市生れ。早稲田大学卒業。“マット・スカダー・シリーズ"をはじめ、『チャイルド44』『パナマの仕立屋』『神は銃弾』『卵をめぐる祖父の戦争』『ABC殺人事件』『偽りの楽園』など訳書多数。著書に『おやじの細腕まくり』『ミステリ翻訳入門』。さらにフェロー・アカデミー講師として後進の育成にあたっている。

レビュー

  • 物語に郵便配達は出てきません

    タイトル通り題名の郵便配達は出てきません。 ネタバレ防止の為、これだけにしておきます。

  • 短く劇的なテンプレ故の人気か。

    旧訳は過去に三種類、映画はヴィスコンティ含め五本見た(「死んでもいい」入れると六本)。危うい関係、安直なヤマ。

  • 都会的?

    田口俊樹さんの訳文って、マット・スカダーもののせいか都会的な印象。読みやすいけど品が良すぎる感。ざらついた声に変換して読んだらいいかも。

  • お前とコーラのために祈ってやる(2014年新潮文庫レビュー)

    2014年新潮文庫版。田口俊樹=訳。1934年出版。翻訳6回を数える古典。不況、完全犯罪、カリフォルニア、砂埃の街道、ダイナー。どこをとってもよくある筋書。しかし映画と同じく、小説も筋書が大事なのではなく、そのありふれた筋から、純粋な高みへ到達する。普遍性を個性豊かに描きだす。 希望と絶望、信頼と懐疑、愛と憎しみ、歓喜と恐怖、エロスとタナトス、死者と生者は背中合わせ。あの世とこの世もそうだ。こんな愛し方がこの世にあるのか?どこかにあるのだろう。本作の神髄は、人は希望を欲し、運命に抗うということ。それがどんな形であれ。題名の意味については、訳者によるあとがきやネット上で概ねある意味を指すとされている。あらすじとは直接には関係はない。 人生は例えばポーカーのようなものかも知れず、いつも自分の願うカードを配られるとは限らない。フランク、お前がそう言うなら、おれもお前とコーラのために祈ってやる。彼岸で一緒になれるように。血にまみれた究極のラブストーリー。 余談:数ある映画化のうち、81年ボブ・ラフェルソン監督、J・ニコルソン、J・ラング版を観た。後半やや異なるが小説の神髄を違う形で叩きつけている。ラングは原作と異なり金髪だが適役。小説よりだいぶふけているニコルソンは相変わらず素晴らしい。 読み比べをしていないが、文庫ではほかに新潮文庫(田中西二郎)、集英社文庫(中田耕治)、田中小実昌(講談社文庫)、小鷹信光(ハヤカワ文庫)、光文社古典新訳文庫(池田真紀子)がある。訳に定評ある田口氏。この田口俊樹版が2021年現在、一番新しい翻訳で、各商品の訳についてはそれらの商品頁を参照ください。

  • まあまあ面白い

    予想を裏切る展開の連続なので、飽きることなく最後まで読むことが出来ると思います。

  • 本の状態

    不足ありません、満足しています。

  • 元祖ハードボイルド

    これ、ハードボイルド小説の元祖と言われているんですよね。 hard boiled、茹ですぎてパサついた卵。 後のダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーみたいに、ニヒルだけど強いポリシーを抱いたかっこいい探偵が登場するわけでもなく、登場人物は己の欲望にのみ従って行動するような、閉塞感のある作品ではありますね。 ただ、最後のほう、破局の来る直前に、主人公が「神を考えた」と唐突に一文だけ書かれる。このへん、味かな

  • 愛っていうのはその中に恐怖が交じるともう愛じゃなくなっちまう。それはもう憎しみでしかなくなっちまう

    ローレンス・ブロックのマット・スカダーものなどミステリーで定評のある田口俊樹の新訳だけあって、力みのない自然な会話文にはどことなくユーモアが感じられ、主人公フランク・チェンバースの持つ、ある種飄々とした雰囲気がとてもよく出ています。 フランクはいわば根無し草のように生きてきた男だ。 フランクが偶然立ち寄った安食堂で出会った人妻コーラの印象は「どこかすねたような顔をしてて、唇をとんがらせてた。ぐちゃぐちゃにしてもとの場所に押し戻してやりたくなるような、そんな唇」を持つ印象的な女性だ。 ギリシア人の夫に対して不満を持つコーラに対し、フランクは一緒に駆け落ちしようと誘いかける。どこへ逃げるのかと問うコーラに対しフランクは言う。 「どこでも。なんでそんなこと気にする?道ってものはどこでよれててどこで曲がっているか、おれは全部知っている。そういう道をどうやってこなせばいいかってこともな。そうやって二人組の根無し草になるのさ」 しかし根無し草生活に耐えられないコーラは、逃げることよりも性悪猫になることを選ぶ。つまり夫の殺害だ。 その後の展開はどんどん面白くなっていきます。 あっと驚く裁判ものとしての面白さもあります。 コーラは言う。 「あたしたちの美しい山はもう消えてなくなってしまったのよ。空を飛ぶのには大きな飛行機のエンジンがいる。やまのてっぺんまで行くにはね。だけどそんなエンジンをフォードにのせたら、フォードなんか粉々に砕けちゃう。それがあたしたちなのよ」 フランクは言う。 「愛っていうのはその中に恐怖が交じるともう愛じゃなくなっちまう。それはもう憎しみでしかなくなっちまう」 文庫本にして200数ページの本書は、テンポよく一気に読めてしまいますが、その実ふり返ると、人の信頼関係や、どんなものも永遠にはあり得ないという普遍的なテーマが描かれていることもあり、1934年の作品ながら古さも感じられず、何度も映画化されるのもうなずけます。

関連する文学賞