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都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

ヒューゴー賞

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

チャイナ・ミーヴィル

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2011-12-20
ページ数
526ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784150118358
ISBN-10
4150118353
価格
1100 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

ヒューゴー賞/世界幻想文学大賞/ローカス賞/クラーク賞/英国SF協会賞受賞! ふたつの都市国家〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく……。ディック-カフカ的異世界を構築し、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説

1972年イングランドのノリッジに生まれる。ケンブリッジ大学で社会人類学の学位を取得。ロンドン大学で国際法の博士号を取得している。98年に長篇『キング・ラット』を発表してデビュー。2000年に刊行した《バス=ラグ》シリーズ第一作『ペルディード・ストリート・ステーション』は、アーサー・C・クラーク賞、英国幻想文学賞を受賞、一躍SF/ファンタジイ界を担う存在となった。02年には The Scar、04年には Iron Council と、《バス=ラグ》シリーズの長篇を発表。両作ともにローカス賞他を受賞、高い評価を受けた。本書は、2009年に刊行され、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞、ローカス賞など英米SF/ファンタジイ主要各賞を受賞した、ミエヴィルの現時点の代表作である。

レビュー

  • メン・イン・ブラックを思い起こされました。

    読むのに10時間かかった。 一気に読破したいと思わせる本だけど、 とても1階で読みきれる内容ではなかったです。 読み終わるとメン・イン・ブラックという映画を思い起こされました。 題名にもあるように「べジェル」と「ウル・コーナ」という2つの都市を巡るストーリーです。 片方の都市を見てはいけないという奇妙な設定が、 いつも誰かに監視されているというディストピア世界観を作り出しています。 ハードボイルなSF小説です。 ぜひ読んでみてください。 この本で気に入った台詞は、 女性捜査官コルヴィが言った 「これがデータマイニングですよ。」

  • 警察ハードボイルド+幻想文学+SF

    "私は売店を〈見ない〉ようにしたが、〈嗅がない〉ようにしているその匂いの源が、私たちの向かっている先なのは明らかだった。『歩け』とアシルは言い、私を伴って両都市のあいだの皮膜をくぐり抜けた"2009年発刊の本書は主要な賞を独占した【モザイク状に組み合わさった2つの架空の都市国家】を舞台にしたディック–カフカ的読後感の一冊。  個人的にもSFは割と読んできたのですが。本書は未読であった事、また『メタルギア ソリッド』シリーズで知られるクリエイターの小島秀夫が紹介していた事から興味を持って手にとりました。  さて、そんな本書はバルカン半島の真ん中あたり(推定)に位置する架空の都市国家、ベジェルの郊外住宅地で身元不明の女性の刺殺死体が発見される場面から始まり、主人公の刑事が調査を進めていく一人称ハードボイルド形式の【リアル警察小説としての展開が8割で】設定こそ物理的な壁がなく、同じ場所に互いに混在するも【両都市国家の国が存在しないものとしてふるまわなければならない】不条理さがSF的ではあるも、それ以外にはギミックも含めてSF要素がほぼ出てこないのに驚きました。  また、これが【翻訳の影響かは判断しかねるものの】ふたつの都市国家が同じ場所に共存することを認めてしまう違反行為、それを取り締まる組織、組織の存在する場所が全てが【ブリーチ】と一緒くたに呼ばれているわけですが。この単語が例えば『ブリーチしたので、ブリーチから来たブリーチが捕まえにきた』といった感じで本文中で頻出するのには、率直に言って、読みづらくて展開に集中できなく少し残念な読後感でした。(都市国家の設定はとても斬新だと思うのですが。。)  警察ハードボイルド+幻想文学+SFとして高く評価された独特な小説を読んでみたい方にオススメ。

  • オススメ

    いやー、超オモシロかった。設定がスゴイ。 ”ベジェル”と”ウル・コーマ”という2つの都市が舞台である。 (設定ではおそらくバルカン半島あたりにある国家です。僕は”サラエボ”を想像しながら読んでました) 民族、宗教の違う人たちが、平和裡に共存している事が、所与の条件となっている。いつ頃から対立しているのだろうか。 2つの都市は重ねあわさっていて、お互いの住民は、実際には見えているのに「見てはいけない」という取り決めになっている。街の中心の国境を越えれば、相手の住民が「見える」一方で、自分の国が「見えなくなる」という決まりである。お互いの住民にとっては、暮らしていくための所与の条件である。厳格なルールに違反”ブリーチ”した場合には、ブリーチにどこかに連れていかれてしまう。古くからの習慣を知らない移民達は、テストが必要だし、観光客にも同様である。(本を読まないと何のこっちゃ・・であるけれど)”ブリーチ”行為には、国家同士の警察よりも上位の、超法規的な機関が関与している。 2つの都市国家が存在するためには、お互いの服装・クルマの相違といった細かな事から、言語の問題などの過去からの大きな問題を含め、お互いの存在を認めるために、敢えて”無視を決め込む”というルールを厳格に守らなくてはならない。 そんな複雑な世界で起こった殺人事件をきっかけに、2つの都市に潜む謎に挑んでいく、ベジェル警察の警部補の話である。 まるでスパイ小説のようだった。 ”あとがき”にも書いてあったけれど、パレスチナ問題の解決法として採りあげられたこともあるそうな・・。 読んでいて、東西に分離していた頃の”ベルリン”や、韓国・北朝鮮の”板門店”、紛争時代の”サラエボ”、”エルサレム”の事を考えながら読んでいました。 とにかくオススメです。

  • 最初の“とっつきにくさ”は我慢です。

    【少しネタバレあり】 ある程度我慢して読み進めていけば、あとは最高に面白いです。 というのも、少しとっつきにくい。 「モザイク状に国境が入り組んだ都市国家」 「お互いの都市が政治的に敵対しているため、相手側の都市や住人が視界に入っても“認識”してはいけない」 という、なかなか斬新かつ秀逸な舞台設定なので、そこに慣れるまでは、少し大変かもしれません。 (一部の方がおっしゃるとおり、多少、翻訳もとっつきにくい部分がありそうです。ゆえに、☆4つ・・・かな。) ですが、そこをクリアしてしまえば、楽しくて仕方がないです。 前述のとおり舞台設定はもちろんのこと、ストーリーもよく練られています。アッという場面も結構あります。 ハマってしまえば何度も読める、“渋い”小説ではないかと。 ジャンルはSFらしいですが、警察小説(ただし舞台が架空の世界)と認識したほうがよいかもしれませんね。 現実にこういう都市国家があったら、ぜひ、旅行してみたいものです。

  • ありそうでない世界にケチをつけられない見事な作風

    「都市と都市」という、原題でも日本語訳でも非常に興味は惹くけど小説的魅力はあまりないタイトルが示すのは、範囲が入り組んでいるだけでなく、重なってもいる2つの都市国家。隣を歩いている人でも他国民であれば異質なものとして見てはいけないという国家です。 荒唐無稽な発想に思われるかもしれませんが、本書を読んでみると、そうでもないような。 作中で東西ベルリンのような飛び地との違いは強調されているけれど、人類の歴史を見ると、共同体における不可触賤民とか政治的地位と宗教上の地位の乖離とか、こんな国家が存在しても不思議はなかった要素は大ありでしょう。 その「ありそうさ」加減と、説明的になりすぎず提示される社会通念のほどよさが序盤の大きな魅力になっています。 一方で、人物像に魅力が乏しいのも、この特殊な「見てはいけない」ものが目の前にあたりまえに存在する世界のぼんやりした輪郭のなせる技かと考えれば気にならないし、文化的な設定が無節操に思えるのもこの特殊な地勢を表現しているのかと納得させられる--なんだか欠点を欠点と指摘できないような巧妙な作風だなぁというしてやられた感を抱かされます。 そうして実際のバルカン半島あたりの歴史との比較に思いを馳せて読み進んでいるうちに、今度は事件の展開に引き込まれてゆく。これもうまい構造です。 ミステリを読みたくて本書を手に取る人がいるのかどうかわかりませんが、ミステリの要素もおざなりでなく十分なエンターテインメント性があり、ラストも鮮やか。 でもこの「ありそうでない」手触りはやはりSFならでは。最後まで欠点を指摘したいのに言い出せないような痛痒感を残しながらも、面白かったと言わざるを得ない作品でした。

  • 都市小説家の面目躍如 ミステリファンにも

    まだ2012年から2ヶ月しか経過していませんが、既にbest級です! ”都市”についてこだわってきたミエヴィルしか書けない、素晴らしい小説です。 二つの隣接する都市で発生した殺人事件、それを追う主人公。 内容は犯人を追うフーダニットと、ありきたりの設定ですが、 その”都市”が全くありきたりじゃない。これは是非読んでみてください。 私は「<見ない>ようにする」とか、「相対局所的に」とか、筆者独特の言葉遊びに ぞっこんです。 SFに興味のないミステリファンの方々にも是非一読を。 今年これから発売されるSFは大変だ。常に本作と比較されてしまうのだから。 不可能ですが、<ボルル警部補もの>とかで連作できないか(^^;?

  • 前半はディストピア的警察小説、終盤は『マトリックス』のようなアクション映画

    という感じで、作品のジャンル自体が変わってしまったような印象を受けました。ブリーチのアシルは完全に映画『マトリックス』のイメージです。 あとがきによると、作者はアレゴリー(寓話)が嫌いで、本書は決して寓話として書いたものではない、としています。よって、前半の寓話的雰囲気がまったく台無しになる程、終盤コミックヒーロー的展開になります。著者の意図通りの展開なわけですが、私は本書は、前半の雰囲気の通り最後まで書き通した方が良かったのではないかと思います。というのも、他のレビューを読むと、エルサレムを連想する方がおられ、冷戦時代や、1990年代に成人を向かえた年齢層の方は、本作にボスニア内戦サラエボや冷戦時代のベルリンを連想してしまう方がおられます。私は後者で、更にナゴルノ・カラバフ紛争地域を連想しました(ブリーチは国連平和部隊相当でしょうか)。個人的な印象では、冷戦時代やボスニア内戦と同時代の年代の方は、著者が意図をどう主張しようとも、本書の設定自体が、現実の、過去現在の紛争地域を連想させられ、強く寓意小説として回収される方向にもっていかれてしまうのではないかと思います。著者は1972年生まれでボスニア内戦時成人しており、モデルを強く意識している世代が故に、終盤で完膚なきまでにぶちこわして見せたのでしょう。しかし結局は前半と終盤で作品がポッキリ二つに折れてしまったような中途半端さが残りました。 この手の寓意小説は、だいたいが重苦しいディストピア小説になりがちですし、希望もなく終わるものが殆どです。本書も、主人公は前向きな姿勢で終わるので読後感は悪くはありませんが、それはあくまでこの小説世界内の話であって、本書前半で連想させられた現実の都市や地域での解決には何ら展望を与えてくれるものでもありません。これらの題材をディストピアにならずにエンタティメントに仕上げた著者の姿勢には賛同しますが、やはりまだまだ道半ば、エンタテイメントに消化/昇華しきれていない、と感じました。いずれエンタテイメントに昇華しきった作品が登場するであろう、試金石という位置づけであろうかと思います。 読み始めは、『 ゴーリキー・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) 』、少ししてボルヘスの『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』(『 伝奇集 (ラテンアメリカの文学 (1)) 』収録)、途中から映画『 未来世紀ブラジル [Blu-ray ]』などを連想しつつ読み、最後は映画『マトリックス』を連想して終わりました。本書を読んで、サラエボを連想した方は少なからずおられるようなので、本書の出版に合わせて『 サラエボ旅行案内―史上初の戦場都市ガイド 』を復刊するなどの企画があっても良かったのではないかと思いました。ディストピア小説とは少し違いますが、一般に幻想小説とされるミロラド・パヴィチ 著『 ハザール事典 女性版 (夢の狩人たちの物語) (創元ライブラリ) 』も連想しました。この本はずっと幻想小説だと思っていたのですが(当時21世紀の幻想小説といわれた)、『 世界文学とは何か? 』に、著者ミロラド・パヴィチ が強度のセルビア民族主義者で、『ハザール事典』(原著1984年)はその視点から読めば何ら難解ではない、と記されているのを読み、確かに、イスラム・ユダヤ・キリスト教の三者が同じハザール国を描写しているにも関わらず、まったく違った感じに描かれているという、幻想的なものは、実は単純に当時のユーゴを構成する諸民族にとっての「現実」だった、という幻想小説を装った政治風刺小説なのだとわかり愕然としたことがあります。 このように、本書の紹介を読み、ボルヘス・パヴィチ・カフカ的寓意小説を期待する読者にとっては、肩透かしを食ったような終わり方なので、その点に留意して読むことをお奨めします。

  • 荒唐無稽な設定を荒唐無稽だと思わせない作者の技量に感服

    都市国家ベジェルで女性の他殺体が発見される。捜査を進めるボルル警部補は、被害者が隣接する都市国家ウル・コーマで殺害されてベジェルで遺棄されたと突き止める。ベジェルとウル・コーマの関係は複雑で、互いの国民は相手を見てはならないという掟があり、許可なく相手の領土に踏み込もうものなら<ブリーチ>という畏怖すべき第3の権力が取り締まりに現れる。ボルルは交渉の末、単身ウル・コーマへ捜査に向かうが、そこで彼は、伝説化している第3の国家オルツィニーの影を見ることになる…。 世界幻想文学大賞受賞作、と聞かされては手にしないではいられません。マシスン『 ある日どこかで 』(創元推理文庫)、ケン・グリムウッド『 リプレイ 』(新潮文庫)といった、人間の想像力が限りないことを見せつけてくれる物語に栄誉を与えてきた文学賞です。この『都市と都市』がどれほどのめくるめくストーリーを差し出してくれるのか、大きな期待とともに頁を繰り始めました。 ヨーロッパのどこかにあるとおぼしき二つの都市国家。両国民が相手を見てはならないという奇妙な規則の存在。そんなとりとめもなくデタラメな設定に、血肉を与える作者ミエヴィルの技量たるや、ひととおりではありません。 独自の言語の存在や領土の入り組み具合、さらには両国を統合しようと画策する<統一派>の存在といった政治論争までを緻密に描きこんで、一人の刑事が捜査に疾駆するハードボイルド・ミステリー×SF小説に仕立て上げているのです。 巻末の大森望の解説によれば作者ミエヴィルはこの物語をアレゴリーとして読まれることを拒絶しているとのこと。それでもやはり私は、これを寓話として読みたくなってしまうのです。壁によって東西に分断されていた時代にベルリンに足を運んだことがありますが、隣接する街をあらまほしからざるものと見なしていた両市民の心情は、まさにこの小説のベジェル人とウル・コーマ人とが互いを見まい、聞くまいと努める心理状態に通じている気がします。

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