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忘れられた巨人

ノーベル文学賞

忘れられた巨人

石黒一雄

記憶と忘却、和解の可能性をめぐり、霧に包まれた古代英国風の世界を旅する寓話的長編。

記憶忘却和解幻想

作品情報

忘れられたものが静かに揺り起こされる、霧深い旅の物語。

アクスルとベアトリスの老夫婦が、息子を探して荒涼とした大地を歩く。歴史の痛みと赦しを静かに問う。

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2015-05-01
ページ数
416ページ
言語
日本語
サイズ
14.1 x 2.7 x 19.5 cm
ISBN-13
9784152095367
ISBN-10
4152095369
価格
1442 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/英米文学

『わたしを離さないで』から十年。待望の最新長篇! アクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため、長年暮らした村を後にする。若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士……さまざまな人々に出会いながら、雨が降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとは――。 失われた記憶や愛、戦いと復讐のこだまを静謐に描く、ブッカー賞作家の傑作長篇。

1954年11月8日長崎生まれ。1960年、五歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡り、以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育つ。その後英国籍を取得した。ケント大学で英文学を、イースト・アングリア大学大学院で創作を学ぶ。一時はミュージシャンを目指していたが、やがてソーシャルワーカーとして働きながら執筆活動を開始。1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞した。1989年発表の第三長篇『日の名残り』では、イギリス文学の最高峰ブッカー賞に輝いている。その後、『充たされざる者』(1995)、『わたしたちが孤児だったころ』(2000)、『わたしを離さないで』(2005)、短篇集『夜想曲集』(2009)(以上、すべてハヤカワepi文庫)を発表。2015年に発表した本作は第七長篇にあたる。これまでの作品とは大きく異なる時代設定で話題を呼び、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーに発売直後からランクインしたほか、英《ガーディアン》紙や《タイムズ》紙で絶賛された。

レビュー

  • また読みたくなる小説

    ラストは衝撃的で何度も読み返したくなる本です。日の名残りも良作だったのでカズオ・イシグロが好きならハマると思います。

  • もうろう。

    あまりインパクトのない単調な物語で、カズオ・イシグロのなかでは中の下。悲しい物語で読んだ記憶も朦朧とします。

  • 難解な作品

    描写がおどろおどろしくて愉快な作品ではありません。著者がこの作品で何を伝えたかったのか残念ながら理解出来ませんでした。ただ読み終えることが出来て良かったと思います。何かとても深い意味のことを著者は伝えたかったのではないかという気がします。

  • 夢中になって読めますが……

    最初はなんだかよくわからないと思いながら読んでいると、だんだん物語の世界が見えてきて、途中から夢中になって読みました。読んでいるとひしひしと切なさが迫ってきます。カズオイシグロなので色々と覚悟はして読みましたが、やはり読み終わったときに心に残るものが重いです。

  • 高尚なテーマのファンタジー

    大作だと思います。大人のためのファンタジーですね。ただ、もう一つ、のめり込めなかったのは、中世イギリス、ブリテン島という特殊な舞台設定。日本人には、あまりにもその情景が浮かびにくかったこと。私自身がイギリスの歴史に詳しくないため、民族間の争いがどのようなものだったのか、知識が不足していたためだと思います。

  • ノーベル文学賞作家、カズオ イシグロの長編!

    2017年にノーベル文学賞を受賞したことで、日本でも一躍その名が日本でも広く知られるようになったカズオ イシグロの長編小説。発売されたときは厚くて重くて、これ以上本を増やせないと買うのをあきらめたが、文庫本になって手にとりやすくなった。アーサー王を主題としているので、そのあたりの情報がないと難解かもしれないが、固定概念なくひとつの読み物としても愉しめる。これをきっかけに、過去のイシグロ作品も読んでみるのも。映画化された『日の名残り』や日本でドラマ化された『わたしを離さないで』も必読。

  • カズオは個人の辛い体験と国家を重ね合わせ、対立の緩和を願い作品化した。

    やはり、賞は政治が絡み社会が軋む問題に直面する欧州が、 移民感情の不安性を昇華した作家を選択した。 訳者が「訳者あとがき」で言いたかったことであろう。 欧米が直面している問題を寓話に落とした現在性の強い普遍的な問題を扱った作品で、 ガラパゴス化している日本人にも、お隣問題に直面させられ お伽噺ではなくなった。 カズオの心は母国を忘却するのが怖くて、 脳が本能的に何度も記憶を再生していたのではないだろうか。 だが、本人には何故繰り返し記憶が蘇るかはわからない。 幼少期の記憶が存在理由の根拠と埋め込まれていたのだろうか。 この忘却による存在理由消滅の不安が 幾多の作品を生む原動力になった思う。 2017年12日10日更新NHKインタビューでのカズオの発言にて やっと私には「巨人」の正体をつかめた。曰く(抜粋)、 「・・・あらゆる社会には埋められた巨人がいると思います。私がよく知るすべての社会には、大きな埋められた巨人がいると思います。今アメリカでは、「人種」という埋められた巨人がいると思います。それが国を分断させています。なぜなら、それは埋められたままだからです。・・・ ・・・これは日本にとって、多くの暗い記憶や日本が犯した残虐行為を、第2次世界大戦直後に押しのけなかったとしても可能だったでしょうか? 不可能だったかもしれません。日本のようなよい社会をいかにして築けるかは、無理にでも物事を忘れることにかかっているのかもしれません。・・・ 確かに日本は多くのことを忘れましたが、日本は自由世界におけるすばらしい自由民主主義国家になることに成功しました。それは無視できない成果だと思います。・・・」 作品には自国、英国人の対立の物語、アーサー王物語が必然的に選択された。 そこでは、父アーサー王と殺し合う実の子モルドレッド。 アーサー王の養父名はエクトル。当書の主人公名はアクセルで似ている。 アーサー王物語では、アーサー王は実子とその配下を皆殺しにした後、 瀕死の状態で、高貴な女性達と小舟に乗ってアヴァロンの島へ行く。 物語を奪胎しており、対立問題が普遍的であることを示している。 主人公の夫婦は、異国で不安な自分のアバターであるから 年老いていなければならぬ。 始まりから鬼(犯罪者)や竜(権力の手先)が話題に出て 自己を脅かしたものを暗示する。 鬼に捕らわれ、呪いの傷を持った少年はイシグロの少年時代。 その傷は不安の象徴だろう。 カズオが書かざるを得なかった意図は美しく 本人は作品化に満足しただろう。 しかし歴史については認識が甘過ぎかなりの失敗作だ。 権力が、個人の自己防御のように 恣意的に歴史的事実を忘却しては不味い。 正々と歴史・事実を公開し批判に耐え得る権力こそが王道だろう。 それでも国家・民族・個人が融合せざるを得ない大きな潮流の中で、 後世、対立構造を解消させる先駆的作品との評価がされると思う。 多忙な読者はラスト9ページから読んで良いと思う。 そこからがカズオが言いたかったことだろう。 そこには女に裏切られた男の深い怨念と許しが書かれる。 男は腑に落とされ、女は嬉しく落涙することだろう。 つらい体験がないと、許せない感情が読み切れないので、作品をより難しくしている。

  • 中高年は要注意

    なんとか読了。★を変更。 前回は文庫本で目が疲れるので読みにくく大変なことの注意喚起。 海外の文学作品は翻訳物で有名、しかもその僅かなものしか知らないが、やはりコストを多少抑えても成り立つ娯楽の最先端は今の日本なのではないかと思ってしまう。ファンタジーを格下に見る解説まで巻末についているが、問題はそこではない。 謙虚な書評にあるような、ケルトの伝承等の基礎知識の差かというとそこも本質では無いように思う。 設定、モチーフ、テーマの全てについて、各地伝承や童話、マンガやラノベ、勿論映画その他諸々で珍しくも無い上に記憶に新しい素材ばかり。ケルトとゲルマンの対立を、我々の文化とルーツで大和政権と各地勢力で考えてみるなら、ブリテンの人達が多少プラスアルファで感慨深く感情移入できるかも知れないと想像がつく程度。 もちろん、わかっていてもつい涙など、高齢の人ほど心を動かされたり考えてしまう部分はあるだろう。 そこから考えると、やはりノーベル賞という看板はハードルを上げてしまっているかもしれない。 とはいえ、ある程度想像のつく展開やモチーフの使い方などよくあることとはいえ、この作品ならではのプラスアルファが感じられなかったところが、やはり残念なところ。ついでに、解説の方も、もっと本格的なケルトの文化、歴史、文学の専門家によって、作品を際立たせ価値を高めるような内容であったなら、何かより深いものも得られたのではないか、という気がしてならない。 大きなテーマであり、部分的なお涙頂戴が無いわけではないので「普通」との評価。 おそらく、人生の終焉を迎える世代ほど、部分部分では、より差し迫ってくるものもあると思うが・・・やはり全体のパワーからしても、むしろがっかりともいえる読了感かもしれないのでなんともお勧めはし難いところ。特に速読派にはお勧めできない気がする。荒野に埋まったお宝を掘り当てるようなもので上手く躓ければ儲けものといったところか。素直に高評価の若い人は、これを機会に、ここ20年のファンタジー作品に漫画を含めて目を通すことをお勧めします。 以下、★1つ時 紙媒体の文庫本を購入した。 数頁程度であれば気づかなかったが、この量を読むのは困難。 本来一度に読める量の半分から数分の一しかこなせないだろう。 というのも、妙にフォントの色が薄く非常に疲れる。 これだけを見ていると気づかないが、目の疲れない他社の文庫本と比べてみると、字体の線も細い。 目を近づけると色もグレー寄り。 読み直すこと、参照のためたどり探すこと、続きを始める箇所の探索も困難。 若い人では大丈夫なのかも知れないが無理。 コスト削減はこんなところでやらないで欲しい。 現在、3D酔いと似た状況。 緩和策は、照明の色を暖色系から青みに変更する程度。

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