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自由の国で (V.S.ナイポール・コレクション 3)

ブッカー賞

自由の国で (V.S.ナイポール・コレクション 3)

V・S・ナイポール

V. S. ナイポールの受賞作は、五つの連作を通じて、疎外、断絶、人種的緊張が渦巻く不安定な世界を描く。中心となるアフリカの旅の物語を軸に、自由や移動がむしろ居場所の喪失を深めていく感覚が浮かび上がる。

植民地独立後の世界疎外人種的緊張亡命暴力連作短篇

作品情報

自由の名の下で、帰属の不安がいっそう深まっていく。

ブッカー賞受賞作として知られる本作は、五つの連作から成る。旅や移動を通じて登場人物たちが自分の居場所を見失っていく様子を、植民地独立後の不安定な空気の中で描き出し、政治的暴力と個人の疎外感を密接に結びつける。短篇集と長編のあいだにあるような構成も、この作品の特徴になっている。

レビュー要約

  • 読者は文体の明晰さと、連作として読むことで見えてくる構成を評価する一方、寓意性の強さや各編の温度差に戸惑う声もある。中心のアフリカ篇に最も強い印象を受けたという反応が目立つ。

  • 批評では、異郷に置かれた人物たちが慣習と誤解のあいだで行き詰まる描写が高く評価される一方、旅日記の断章はやや取ってつけた枠組みに見えると指摘されている。

書籍情報

出版社
草思社
発売日
2007-12-20
ページ数
400ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784794216632
ISBN-10
4794216637
価格
3897 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学

自由になったはずなのに、この違和感は何だ? ポストコロニアル、この現代世界文学における最重要テーマに挑み、 小説世界に新境地を拓いたブッカー賞受賞作。

レビュー

  • 罰を受けなければならないのは誰なのか!

    下らない話に聞こえるかも知れないが、『自由の国で』(1971年刊)の方が『ビスワス氏の家』よりも最近評判がいいように思える。勿論、僕は『家』こそが不朽の名作だと信じてやまないのだが、サイードの言う「ナイポール現象」とでも言うのか、『自由の国で』がポストコロニアルという流行のタームによりふさわしい内容をもっているからか、多くの人がこの本を押す。この本の解説でもここにナイポールの転換点があり重要なんだと力説する。しかし、それはあまりに研究者の発想に過ぎるのではないか。一読者としてみた場合、同じアフリカものでは『暗い河』の方が遥かに面白かったし(雑貨屋のインド系店主がいい)、イクスパトリオットとしての英国人が罰をうける話としては『ゲリラ』のほうが直截で分かりやすく、また、ホモセクシュアルの英国人というナイポールのステレオタイプについては『到着の謎』におけるアランの方がよりリアルであると思う。また、アフリカのポストコロニアル状況について言えば、シヴァ・ナイポールのアフリカ紀行が遥かに優れていると思う。贅言を承知の上で言えば、アフリカの奥地を分け入っていくとらえどころのない恐怖についてはコンラッドの『闇の奥』に遠く及ばない。 またひとつ分かりにくい話をすると、ナイポールは、R. K. ナーラーヤンにおける小説の成功を、インド的なるものについてインド人以外の人々に向けて英語で書いたことだ、といささかの皮肉を込めて書いている。では、このナイポールの小説は誰に向かって書かれたのかを問いたい。この小説は、帝国と植民地支配というギルティに寄り添いすぎているように僕には思えてならないのだ。過去の歴史を倫理的に裁くことは無意味だとナイポールは繰り返し語っているにもかかわらず、この小説はその辺の曖昧さを隠しきれない。ナイポールの矛盾が噴出している、という意味では興味深い小説ではあるのだろうが・・・。

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