闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF 252)
氷の惑星を舞台に、性別が流動する種族との接触を通じて、ジェンダーや異文化理解、政治を問う。外交官の視点から孤独や信頼、社会構造を哲学的に掘り下げる作品。
作品情報
性別の流動性を通して、異文化理解と政治を見つめる。
アーシュラ・K・ル・グウィンの代表作。氷の惑星ゲセンと、その住民の流動的な性別観を通して、外交、信頼、孤独を描く。SFの枠を広げた重要作として知られる。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 1977-07-20
- ページ数
- 400ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 2.3 x 14.8 cm
- ISBN-13
- 9784150102524
- ISBN-10
- 415010252X
- 価格
- 1650 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/英米文学
両性具有人の惑星、雪と氷に閉ざされたゲセンとの外交関係を結ぶべく派遣されたゲンリー・アイは、理解を絶する住民の心理、風俗、習慣等様々な困難にぶつかる。やがて彼は奇怪な陰謀の渦中へと……エキゾチックで豊かなイメージを秀抜なストーリイテリングで展開する傑作長篇
レビュー
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新品同様です
殆んど新品、楽しく読ませて頂いています。
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ジェンダーについて考えさせられるSF
ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞作品。言わずと知れたSFの名作。 これが続き物(ストーリーがではなくて同じ世界設定の別の小説がこれの前にあるという意味)であることをあとがきで知った。そちらを最初に読んでいれば、もっと最初から入り込みやすかったかもしれない。 訳もすごくよかった。章ごとに書き方が変わっていて、良い訳者さんだなと思った。 全編通してとにかく寒かった!笑 冬に読めば雰囲気出て良いかな。 これが名作だっていう前情報がなければ序盤で読むの挫折してしまっていたかも。なぜならこの小説は報告書とか伝承とかいう形をとって進むから、世界観や用語説明が一切ないのだ。 しかし完璧に構築された世界設定や文化は、読み進めるうちにだんだん理解できるようになってくる。手探り状態で異星に来てなんとか適応しようとする使者ゲンリー・アイと同じ目線でこの世界を体験しているような気分になれるのだ。 たとえば何度となく出てくる「シフグレソル」、読むうちになんとなく意味がわかってくるのだけれど、日本語に訳すとなるとなんだろう? 体面? 面子? 儀礼? 形式? 礼? うーん。わからないけれども、わかる。他言語を体得する時の気分そのものだ。 それにしてもいやほんと、完璧な異世界構築には脱帽する。これがほんとの「異世界もの」だよ。ここまで徹底するのにはどれだけの知識と調査と細かな想像力が必要だったのだろう。そこに住む人間の性質に極寒の環境や動植物の存在が大きく影響しているとか。世界構築がいちいち論理的。戦争という概念がないなんて我々には信じられない国々のことも、ただのifの夢物語なんかじゃなくて「こういう文化、環境、歴史だからこそないんですよ」という説明をちゃんと与えてくれる。素晴らしいね。 さてこの小説を特徴づけている両性具有、ジェンダーの話。ケメル期とか、動物の発情期みたいなものだよね。そう考えると確かに年がら年中ケメル状態の我々の方が異常だよなあ。実際の動物にも両性っているわけだし、突拍子のない空想と言う風には思えなくなってくる。我々の常識で言えば一見ありえない体の構造をした人々なのだけれど、読了する頃にはゲンリー・アイと同じようにこっちの方が変な人間という風に思えてくるものだから不思議だ。 本書の所々で「男性的」または「女性的」な特徴について言及されているわけだけれど、性が固定されていない世界で唯一性が固定された「男性」のゲンリー・アイが男性性や女性性に考えを巡らせる様は面白い。目の前の人間をつい男性っぽいとか女性っぽいとか考えてしまったり、この人のこういう部分は酷く女性っぽい、とか思ったり。その視点はその星の人にはないもので、本人たちは今自分男寄りだわー女よりだわーとか微塵も考えていない。ゲンリーに染みついた思い込みからつい考えてしまうこと。それで、特に初期のゲンリーは男/女という二元論で人を捉えようとしがちだということがわかる。でも終盤ではその二元論的思考からも脱却しようとしている。 ジェンダー問題を考える画期的な素材の小説にもなり得るけれど、一方で男性的な性質女性的な性質もはっきり書かれているわけで、はてさてジェンダー論者はこの小説をどう評価しているのやら。気になるところ。 気になると言えばもう一つ、所謂「腐女子」の方々はこの小説を腐女子的な目線でどう楽しむんだろう? 終盤のゲンリーとエストラーベンに芽生えた友愛、あれは感動的だ。しかしBL?ではありえないし。ケメルに入れば自動的に男役女役に一時的に性別が固定されてしまう世界で腐女子的な楽しみ方はどのようにするのか、気になるところ。 そしてジェンダー関連で最後に。ル・グィンって女性だったんですね……。読み終わった後知って、物凄くびっくりした。だって文章が感傷的じゃなくてすごく緻密で論理的でSFだから勿論科学の視点もあって……なんといえばいいのか、とにかく女性作家独特のあの感じが一切感じられなかったのだ(勿論良い悪いの話はしていない。ただ文章の傾向の話) というところに自分の中のジェンダー規範に気づかされ二重にしてやられたという感じ。
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静謐な冬の惑星で心温まる交流譚
両性具有種族が活躍するフェミニズムSFの発端、みたいな謳い文句をよく聞くけれど、実際に読んでみるとまあそこもしっかりと描かれてはいるけれど、他者と交流する難しさや人・モノ・国家に対する絆の結びつきを描いた良作だと感じた。 専門用語がカタカナで羅列されるので序盤はややとっつきにくい印象を受ける。人名も長くて覚えにくかったり、ヒロイン(?)も複数の名前で呼ばれたりするので、とっつきにくさに余計に拍車をかけている。 ヒロインの日記で最初に羅列される単語が何かよくわからなかったので、もしも初読されるのであれば巻末にある時間の表記をあらかじめ読んでおくと理解しやすいかもしれない。…むしろこれ巻頭につけてほしかったかも。 SF的ギミックは宇宙船や心話、電気自動車、未来予知程度でやや少なめ。国王制や建物が石造りなところなど、どちらかというとファンタジー世界なイメージを想起させられる。 ゴリゴリSFを想像しながら読むと肩透かしを食らうかもしれないけれど、こういうのも『オネアミスの翼』や『天空の城ラピュタ』っぽくて好きな人はハマりそう。僕はドハマリした。 主人公の使節ゲンリー・アイとカルハイド王国の宰相エストラーベン、2人の視点で物語は進み、その合間に星に伝わる昔話や逸話も盛り込まれる展開。国を追われ逃亡者となり、亡命した国でも酷い扱いになる…移民や難民といった立場の人々の気持ちも描写されているのはとても良かった。 後半、ゲイリーとエストラーベンは追手から逃れる為に、2人で雪と氷に閉ざされた世界へ逃避行する。何もない世界で2人だけで助け合い、交流を深めていくのも感動した。
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女性向けかなあ
同性愛、なの? 女性向けのような気がした 細かい男女というか両性具有というかの友情と愛情 自分はあまり真に来なかった ただ作品の出来は悪くない、自分はサバイバル小説として読んだがそれで面白かった
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自分のために書かれた物語かと思った
私は小説に限らず、一般向けの学術書?なども結構読むほうで、神話伝承も大好きです。 物語の合間に、舞台である惑星ゲセンの気候や神話や風俗などについての文章が挿入されており、これが結構つぼにはまって、むさぼるように読みました。 後半の長いクライマックスにいたるくだりは、かなり熱い展開で、主役の片方、エストラーベンがほんとうに魅力的に描かれます。 ただ、このゲセン人のエストラーベンは雌雄同体で、男だったらかっこいい!女だったら素敵!と思うところを、なんとも萌えきれない気持ちになるのです。ただ、それこそがこの物語の主題でもあります。 ジェンダーを強く意識した物語で、女性作家ならではですが、優れたSFで、ここ数年で一番面白い小説でした。 幅の広い読書をされる方にオススメです。 ちなみに一番好きな挿話は、惑星ゲセンへの入植神話で、血なまぐさい何かが起きたことが暗示されており、実際何が起こったのかすっごく気になります。
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表紙の絵が印象的
本作品は、表紙のカバーイラストが何度か変わっています。 一番新しいのだと、雪景色のなかでソリをひく二人連れの絵ですが、この「おじさん」の絵は、当時ハヤカワSF文庫にたくさんカバーイラストを描かれていた角田純男さんの作画です。 作品の内容からいうと、「ソリ」の絵の方があっている気はしますが、この「おじさん」は、目力で、印象に残っています。 内容は、今読むとすこし設定が古臭いですが、「性別」というものについての新しい視点を持たせてくれますし、冒険活劇的なドキドキや、ラブの要素も(少し)あります。
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両性具有。何を書きたかったのか
両性具有な人類。昔に遺伝子操作され、両性具有となった人類が、極寒の惑星の開拓者として派遣されるが、人類からは忘れ去られてしまう。そこへ再び、人類からファーストコンタクトのために1人の男が派遣される。 両性具有な人類。それが著者の理想の人類なのであろうか。そうであってはならないと読みたいが、小説の主人公は人類から派遣された一人の男ではなくて、その派遣者を理解していた両性具有の高官に思える。彼等の日記もしくは記録という形で話が進んでいくが、両性具有の高官の心理描写を敢えて控えているように思える。人類には到底理解できないものであるように。理想の人類の形態として、両性具有を提示したかったのか? それとも、その可能性を問題提起したかったのか? 何を書きたいのか、読者に問題提起する形で、小説は終わる。
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圧倒的な充実感
遥かな昔,惑星 Hain の文明の絶頂期に,居住可能な(地球を含む)惑星に人類型の生物を移植する計画が実行された.しかし氷河期の最中にある惑星 Gethen には,多分生殖を確実にするために遺伝子工学的に新型の男女両性兼備の人類が移植された.Hain文明の衰亡と共にこれらすべては忘れられた.やがて各地の文明が再興し,惑星連合体 Ekumen は,旧植民地を探し続け,Gethenにも Ekumen の外交官が派遣される運びになった.地球人(黒人)の Genly Ai がGethenに降り立ち,ここから小説が始まる.Gethen には二つの超大国があって,東は封建制王国,西は共産国である.Ai は王国で説得工作を始めるが,大問題は宰相 Therem Harth Estraven にしか理解されず,これを政敵に逆用されて宰相は失脚し,国外追放になる(極寒の地なので実質的死刑).Ai は共産国に移るがここでは話がより不可解で,失敗のうえ,行き場を失う.やがて Estraven と Ai は再会し,大陸の西北端から王国国境を目指して800マイルの冬の旅を敢行する.これまでは華麗繊細を極めた政治謀略の描写ではらはらし通しだったが,ここからは二人の異星人の間の理解と友情の育成が語られ,事態は絶望的なのに読者としては至福の時間となる.これほど面白い物語がいくつあるか知らないが,この話はその奇跡的な性の設定もあって,面白い.更に特筆すべきは原文の古風さをうまく鴎外調の日本語に移した翻訳の冴えである.萩原規子の西の善き魔女 の原義はこの著者への尊称であるし,その正編の最終巻のタイトルはこの本のタイトルそのもので,その意味は,Gethen の古い歌によれば光なのだ.この作品はSFには違いないが,それが含む圧倒的な内容によって時代を超えているのだ.
関連する文学賞
- ネビュラ賞 第5回(1970年) ・受賞