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マンハッタン・ビーチ

アンドリュー・カーネギー成人向けフィクションおよびノンフィクション優秀賞

マンハッタン・ビーチ

ジェニファー・イーガン

大恐慌期から第二次世界大戦下のブルックリンを舞台に、父の失踪を追うアナ・ケリガンが、海軍工廠で働きながら女性潜水士への道を切り開く歴史小説。港湾の闇社会、家族の沈黙、海への憧れが重なり、戦時下の都市に生きる人々の孤独と自由への希求を描く。

歴史小説第二次世界大戦女性の労働家族の秘密海と記憶

作品情報

暗い海の底へ潜ることは、アナにとって失われた父と自分自身を探す行為でもあった。

幼いころ父に連れられて訪れた海辺の屋敷。その記憶は、父の突然の失踪後もアナの中に沈みつづける。戦時下のニューヨークで海軍工廠に職を得た彼女は、重い潜水装備をまとって海底へ向かう仕事に魅せられ、父の行方を知るかもしれない男デクスター・スタイルズと再び出会う。個人史と都市史を重ねた、サスペンスと抒情を併せ持つ長編。

レビュー要約

  • 時代考証の厚みと水辺のイメージが、犯罪小説の緊張感と家族小説の感情を結びつけている。実験的な前作群より語りは直線的だが、人物の痛みと親密さを支える筆致が評価されている。

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2019-07-18
ページ数
533ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784152098733
ISBN-10
4152098732
価格
3815 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学

アナ・ケリガンは、幼いころから海に魅了されてきた。潜水士を志す彼女は、ある晩友人に連れられて行ったクラブで、オーナーのデクスター・スタイルズに会う。アナは彼を憶えていた。幼いころに行ったマンハッタン・ビーチの砂浜にある屋敷の主だったのだ。そして、そのとき彼とひそやかに言葉を交わしていたアナの父は、数年前に消えた――。 彼は父の失踪の鍵を握っているのではないか? そう考えたアナは、彼に近づくが…… 第二次世界大戦下のニューヨークを舞台に、海に魅惑された女性の軌跡を描き出すピュリッツァー賞作家の傑作長篇。アンドリュー・カーネギー・メダル受賞作。 「イーガンの目を通して世界を見ると、言葉を介して、新しく世界を愛おしむことができる」――ジョージ・ソーンダーズ(作家) ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー 2017年のベスト・ブックスに選出 BBC スペクテイター誌 タイム・マガジン誌 カーカス・レビュー誌 ブックリスト誌 USAトゥデイ誌Amazon.com ニューヨーク・タイムズ・ブック・レビュー ガーディアン紙 NPR オブザーバー紙 メイル・オン・サンデー紙 フィナンシャル・タイムズ紙 エスクァイア誌 サンフランシスコ・クロニクル紙 Slate.com

1962年、シカゴ生まれ。ペンシルヴァニア大学卒業。1993年に短篇集Emerald Cityを刊行。1995年に発表した初の長篇『インヴィジブル・サーカス』はベストセラーとなり、映画化された。長篇第二作Look at Me(2001)は全米図書賞候補となり、長篇第三作『古城ホテル』(2006)を経て、長篇第四作『ならずものがやってくる』(2010)(ハヤカワ文庫刊)でピュリッツァー賞、全米批評家協会賞、ロサンゼルス・タイムズ文学賞、全英図書賞(国際部門)を受賞。長篇第五作にあたる本書は2017年に発表され、アンドリュー・カーネギー・メダルを受賞したほか、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする有力紙誌に高く評価された。2018年よりPENアメリカ会長を務める。

レビュー

  • 戦時下のアメリカに生きる少女の成長と冒険の物語

    スターリングラード包囲戦の12月、という描写があるから1942年、第Ⅱ次世界大戦まっただ中のアメリカ。ニューヨーク、マンハッタンでアメリカ初、前代未聞の女性潜水士を目指す娘アナ。夢のために強烈な男社会の理不尽と戦う彼女にはもう一つの秘めた目的があった。 5年前に突然謎の失踪をした父エディ。「父に捨てられた」という簡単で誰もを納得させる理由を拒否し、真相を探るため唯一の手がかりであるイタリア系ギャングのボス、デクスター・スタイルズに近づいていく彼女だが・・・。 アナの少女時代(30年代)と現在(戦時下)の2つの時間軸を行き来しながら物語は展開していく。 中心となるのはアナの成長と冒険の物語だが、交互に影響し合う形でエディとデクスターの物語が進行していく。 少女時代から「両親の求めるいい子」でいられない奔放さを秘めていたアナ。重度の障害を持って生まれた娘(アナの妹)リディアを愛しながらも受け止めることができず、怒りと自己嫌悪をかかえるエディ。イタリア人としての姓を捨て、マフィアの幹部として、また結婚した妻の父の有能な補佐役として充分に富と地位を得ながら、その立場にいらだちを抑えられないデクスター。 彼らはみな「現在の自分」に納得出来ず、それぞれの環境に安住できていない。どうしていいかわからないまま何かを変えようとして、ある者は現在の自分を捨てて立ち去り、ある者は道半ばにして倒れ、そしてある者はそれでも自ら選んだ道を歩んでいく。 戦時下のアメリカを豊かなディテールで描いた歴史小説であり、健やかで強靱な心を持つ少女の成長小説であり、生まれたばかりで死と隣り合わせの潜水士の世界や、Uボートの脅威にさらされながら航海する海の男たちの世界を舞台とする冒険小説。 贅沢すぎるつくりはストーリーの集中力を削ぎそうな物だが著者の筆力は確かで、時間を忘れて楽しむことができました。 ただ、解説によると著者は本作まではかなり実験的な小説を書く作家だったそうで、本作でも特に後半では40年代(作中の現在)の緊迫したアクションシーンからシームレスに30年代の事件に流れるような、ストーリーのうねりに合わせて2つの時間軸が融合するような手法を採用しており、ある登場人物がその時点で知るはずのないことをなんの説明もなく知っていたりというような普通のリアリズムで考えるとおかしなことが起こるので、そのあたりを認めにくい方には向かないかもしれません。 冒険小説ファンの私にとっては「女性作家には優れたミステリーやSFは書けても冒険小説はムリだろう」(ああ、なんて差別的な)という偏見を木っ端みじんにしてくれたという意味で、たいへん憎たらしい作品です(笑)。

  • アナが潜水士になるまでの話よりも、ダニエル・スティールのようなメロドラマ・家族の話、そしてこの作者のフェミニスト的な思想や主張の印象が強く

    全体的にアナという女性の自立か、家族の絆や家族の崩壊と再生か、デクスターというマフィアの男の魅力や孤独の、一体何を描きたかったのか、よくわからなかったようなものも私は強く感じた。 この話も、いろいろな要素を詰め込み過ぎてかえっていろいろと中途半端、散漫な印象というパターンのような。 それに主要人物の一人の終盤での退場があまりにも唐突過ぎて、私にはよくわからなかったのだが。 それにずっと年上の妻帯者、しかも後ろ暗いことにも手を染めているマフィアという、何とも厄介な男を愛してしまい、こうしてわざわざ大変な生き方を選択するアナの生き方。 でも、これも自立した強い女の自分が決めた道だものとでも言うような、こんな作者のフェミニスト的な主張や思想が色濃く。 私としてはそうした作者の主張や思想があまり合わないなと感じてしまった部分も。 通常はアナの元の職場の、気のいい独身の元上司とでも恋愛した方がよほど平穏無事だろうに。 こうした評価になってしまったのも、私がデクスターという男性にあまり魅力を感じることができなかったというのも、大きいのだろうが。 それにこうした年齢差が大きく、しかも既に出会った時は相手の男性は既婚者という、これらカップルの設定の類似など、いろいろとダニエル・スティールお得意のメロドラマのような印象が強かったし。 このように作者個人の主張や思想が強く反映された作品というのは、読者によって好き嫌いが大きく分かれるなと改めて感じた。

  • 恋愛小説ハーレクイン

    アメリカで賞に輝いた作家という事で読んでみました。 取材を通して諸所、細密な落とし込みは評価に値すると思いますが、 あらすじはただの恋愛小説。 緊張感が保たれた章の区切り方で最後まで読めましたが、 文学の範疇ではないと感じました。 一般受け狙いなのかわかりませんが、読み物としては大衆向け。

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