作品情報
希望を抱いて到着した都市で、アンドレアは家の暗さと大学の光のあいだで自分を探す。
『Nada』は、カルメン・ラフォレのデビュー作として知られる戦後スペイン文学の古典です。大学進学のためにバルセロナへ移ったアンドレアの視点から、閉塞した家庭環境と都市の空気、そして成長の痛みが、短く鋭い文体で描かれます。
書籍情報
- 出版社
- 河出書房新社
- 発売日
- 2018-12-26
- ページ数
- 304ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.4 x 2.8 x 19.8 cm
- ISBN-13
- 9784309207612
- ISBN-10
- 4309207618
- 価格
- 3548 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/スペイン文学
スペイン版『悲しみよこんにちは』ともいえる当時23歳の著者が描いた青春の光と影。現在まで読み継がれるスペイン文学不朽の名作。
カルメン・ラフォレット 1921年バルセロナ生まれ。23歳で初めて書いた本作が第1回目のナダル賞を受賞。内戦直後の厳しい時期の、この無名の若い女性の受賞はスペイン文学界に大きな影響を与えた。現在まで長く読み継がれているスペイン文学史に残る名作。
レビュー
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(2019年―第35冊)フランコ独裁政権下で書かれ、政権の検閲をパスできた小説であることを加味して読む必要があるだろう
スペイン内戦が終結した直後のバルセロナに18歳の主人公アンドレアがやってきます。田舎暮らしの彼女は当地の大学に通うため、アリバウ通りにある祖母のアパートに間借りすることにしたのです。祖母のほかに一緒に暮らすのは、厳格な伯母アングスティアス、ボヘミアンな音楽家である叔父ロマン、売れない画家の叔父フアンとその妻グロリアと子供、家政婦アントニア。一癖どころか二癖以上もある面々が常にいがみ合い、時に露骨な暴力をふるう様子がどこか心を抑え込んだ若いアンドレアの目を通して淡々と描かれます。 物語はアンドレアがバルセロナにやってくる日に始まり、1年を経てマドリードへと旅立つ日に幕を閉じます。その1年の間にアンドレアが目にした家族の物語は決してバラ色のものではなく、ぎすぎすしたわびしくさびしいものとして彼女の人生に残るという話です。それを「Nada(なにもない)」といくら位置づけようとしても、それは人生の大きな傷として残るという逆説的な物語です。 発表されたのは作者カルメン・ラフォレットが23歳のとき。1945年ですからフランコ独裁政権が継続中で、国家による出版物の検閲も当たり前の時代です。その検閲を経たうえで世に出たものですから、今の世から眺めると内戦後の苛烈な社会状況や社会矛盾はあまり明確には登場していないように見えます。そこがどこか食い足りない気もしますが、国を二分した争いの実相にまではまだ達することのできていない18歳の少女の目を通した物語として読めば、それも無理からぬことかもしれません。 .
関連する文学賞
- プレミオ・ナダル 第1回(1944年) ・受賞