雌犬
コロンビア太平洋岸の海と密林に挟まれた寒村で、子を持てないまま中年に差しかかったダマリスは、母を失った子犬を引き取り、娘のように愛しはじめる。孤独、母性への渇望、夫婦の冷えた関係、過酷な自然が絡み合い、愛情はしだいに執着と暴力を帯びていく。
Work Information
一匹の雌犬に注がれる過剰な愛が、孤独と喪失の奥に潜む暴力をあらわにする、濃密なトロピカル・ゴシック。
『雌犬』は、ピラール・キンタナのスペイン語小説 La perra の邦訳である。舞台は、自然の美しさと暴力が隣り合うコロンビア太平洋岸。子どもをあきらめたダマリスが一匹の雌犬を迎えることで、母になりたいという願い、夫婦の沈黙、土地に染み込んだ貧しさと死の記憶が一気に噴き出す。余白の多い簡潔な文体で、愛することと支配することの境界を突きつめる作品。
Review Summaries
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抑制された文体と湿度の高い舞台が強い印象を残す一方、救いの少ない展開や主人公の感情の激しさに距離を感じる読者もいる。母性を美談に回収しない冷徹さが、読後に長く残る作品として受け止められている。
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短い小説ながら、海辺の村の生活、夫婦の緊張、動物への愛着が鋭く描かれる点が評価されている。簡潔さを力強いと見る声がある一方、残酷な場面と暗い結末を重く感じる反応もある。
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心理小説としての切れ味、無駄のない散文、愛と裏切りと見捨てられることをめぐる鮮烈な描写が高く評価されている。短い場面の積み重ねが、主人公の不穏な変化を強く印象づける。
Book Information
- Publisher
- 国書刊行会
- Published
- 2022-04-25
- Pages
- 180 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 13.5 x 2 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784336073174
- ISBN-10
- 4336073171
- Price
- 2640 JPY
- Category
- 本/文学・評論
これはわたしの犬《むすめ》。 もし何かしたら、殺してやる。 この世から忘れ去られた海辺の寒村。子どもをあきらめたひとりの女が、もらい受けた一匹の雌犬を娘の代わりに溺愛することから、奇妙で濃密な愛憎劇《トロピカル・ゴシック》が幕を開ける…… 人間と自然の愛と暴力を無駄のない文体で容赦なく描き切り、世界15か国以上で翻訳され物議をかもしたスペイン語圏屈指の実力派作家による問題作が、ついに邦訳! 【古川日出男さん推薦!】 全篇に乾いた〈距離〉が満ちる。 人が愛に渇いて、世界中が愛の雨を枯渇させて、乾いて。 物語はまさに〈断崖〉の上に立つ。 【スペイン語圏の錚々たる作家たちも絶賛!】 『雌犬』は、真の暴力を描いた小説だ。作者キンタナは、私たちが知らないうちに負っていた傷口を暴き、その美しさを示して、それからそこに一握りの塩を擦り込んでくる。 ――ユリ・エレーラ この本は、あなたを変える。残忍であると同時に美しいコロンビア沿岸の荒々しい風景のなかで、母性、残酷さ、自然の揺るぎなさに注ぐまなざしがここにある。結末は忘れられない。 ――マリアーナ・エンリケス この飾り気のない小説の魔力は、一見何かまったく別のことを物語りながら、多くの重要なことについて語ることにある。それは暴力であり、孤独であり、強靱さであり、残酷さだ。キンタナは、冷静で、無駄のない、力強い文体により、読者を驚嘆せしめるのだ。 ――フアン・ガブリエル・バスケス ☆2018年コロンビア・ビブリオテカ小説賞受賞 ☆2019年英国PEN翻訳賞受賞 ☆2020年全米図書賞翻訳部門最終候補 ☆RT Features制作による映画化決定! Pliar Quintana, La perra(2017)
1972年コロンビア・カリ生まれ。教皇庁立ハベリアナ大学卒業後、2003年に長編『舌のこそばゆさ』でデビュー。国内外で文学的力量が高く評価され、2007年にはヘイ・フェスティバルの「39歳以下の傑出したラテンアメリカ作家39人」の一人に選出。 代表作『雌犬』は、世界15か国語以上に翻訳され、2018年コロンビア・ビブリオテカ小説賞、2019年英国PEN翻訳賞を受賞、2020年には全米図書賞翻訳部門最終候補にノミネートされた。 その他の作品に、長編『珍奇な埃の蒐集家たち』(2007、ラ・マル・デ・レトラス小説賞受賞)、『イグアナの陰謀』(2009)、短編集『赤ずきんはオオカミを食べる』(2012)がある。最新長編『深淵』(2021)で、スペイン語圏最高の文学賞の一つであるアルファグアラ賞を受賞。 暗く複雑な人間の側面を、簡潔かつ濃密に描くスタイルを特徴とし、現在、世界的に大きな注目を集める実力派作家である。 スペイン語翻訳者、(有)イスパニカ翻訳講座講師、校正者。兵庫県出身、同志社大学文学部卒業。グラナダ大学セントロ・デ・レングアス・モデルナス留学。訳書にマイク・ライトウッド『ぼくを燃やす炎』(サウザンブックス)、フェデリコ・アシャット『ラスト・ウェイ・アウト』(早川書房)、トニ・ヒル『ガラスの虎たち』(小学館)、共訳書にペドロ・バーニョス『地政学の思考法』(講談社)、マリア・ピラール・ケラルト・デル・イエロ『ヴィジュアル版スペイン王家の歴史』(原書房、青砥直子名義)などがある。
Reviews
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面白いが、なかなか重たい話
コロンビアの恐ろしいど田舎で暮らす主人公の女性は、子供ができないことを苦にしていたが、ある日もらい受けた雌犬を溺愛するようになる。しかしこの犬がそう素直に懐くわけでもなく、主人公の女性は屈折した愛憎を抱えるようになる。というのがだいたいのあらすじ。 簡潔な筆致で、土地の閉そく感や主人公の行き場のない感情がひたひたと伝わってきて、息が詰まりそうになる。 行間が(文字通りの意味で)広く、ページ数のわりには短い。
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👍🏾
犬に振り回される夫婦。情景描写、人間描写が丁寧な筆致で描かれているから余計に重たい... 映画化するらしいので、楽しみですね。 コロンビアの新鋭作家の翻訳は嬉しい! Ornamentalとか気になっている作品が沢山あるから、今後も期待してます。