スモモの木の啓示 (EXLIBRIS)
一九七九年のイラン・イスラム革命後、テヘランの家を焼かれた一家は、知的な自由と命を守るため北部の村ラーザーンへ逃れる。十三歳で命を落とした末娘バハールのまなざしが、生者と死者、民話と政治的暴力が交錯する一家の喪失を語る。
作品情報
スモモの木の上で母が啓示を受けた瞬間、一家の悲劇は歴史と神話の境目で語り直される。
『スモモの木の啓示』は、イスラム革命後のイランで暴力に巻き込まれた一家を、死者である少女バハールの語りによって描く長篇小説。テヘランから森深い村へ逃れた家族の物語には、ゾロアスター教の記憶、ペルシアの民話、死者や精霊との交わりが織り込まれ、現実の苛酷さを幻想の言葉で受け止めようとする。日本語版は白水社のエクス・リブリスとして刊行され、英語版は Europa Editions から刊行された。
レビュー要約
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革命後のイランを舞台に、家族の悲劇と愛と喪失を幻想的に重ねる点が評価されている。死者の視点や寓話的な挿話が多く、読み解く余地の大きい作品として紹介されている。
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ペルシアの民話や夢のイメージで革命の暴力を神話化する力を認めつつ、語りの制御や構成には厳しい評価もある。野心的だが均整を欠く部分もある作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 白水社
- 発売日
- 2022-01-28
- ページ数
- 274ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.6 x 2.1 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784560090718
- ISBN-10
- 4560090718
- 価格
- 3410 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
〈国際ブッカー賞〉〈全米図書賞〉最終候補作品 1988年8月18日午後2時35分に、村を見下ろす丘にあるいちばん背の高いスモモの木の上で母さんは啓示を受けた。まさにそれと同じ瞬間、兄さんのソフラーブは絞首刑になった。 それを遡ること9年、イスラーム革命の最中に、テヘランの私たち一家は熱狂した革命支持者たちによって家に火を放たれ、かけがえのないものを失った。私たちは道なき道を分け入り、ようやく外界から隔絶された村ラーザーンにたどり着く。そこは奇しくも1400年前、アラブ人の来襲から逃れたゾロアスター教徒が隠れ住んだ土地だった。 静かな暮らしを取り戻したと思ったのもつかの間、村にも革命の波が押し寄せる。ある日ソフラーブが連行されると、母さんのロザー、父さんのフーシャング、姉さんのビーターの身にも次々に試練が降りかかる……。 13歳の末娘バハールの目を通して、イスラーム革命に翻弄される一家の姿が、時に生々しく、時に幻想的に描かれる。『千一夜物語』的な挿話、死者や幽鬼との交わり、SNSなどの現代世界が融合した、亡命イラン人作家による、魔術的リアリズムの傑作長篇。
1972年イラン生まれ。イランでジャーナリストとして活躍し、『ペルシア文学百科事典』の編著、シルクロードの踏破本などを発表していたが、2011年に政治難民としてオーストラリアに移住し、現在はパースに暮らしている。創作はペルシア語で行っており、小説デビュー作の本書も元々はペルシア語で書かれた。2017年に英訳版がオーストラリアで出版されて<ステラ文学賞>最終候補になり、大きな話題を呼んだ。そして2020年に英米を含む広い地域で発売になり、〈国際ブッカー賞〉と〈全米図書賞〉の翻訳文学部門の最終候補に残った。
レビュー
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心を揺さぶる名著
本書が出たてのころ、近くの図書館に新書の特集で発見し、静かな佇まいのこの本に惹かれて読み始めた。 非常に美しくて、哀しくて、 読み終えた頃には涙が止まらなかった。 もぬけの殻になるくらい泣いてしまい、当時大切な人を失った私の心とぴっとりと重なり、 言葉で言い表せないきもちになったのを覚えている。 こんなに感情を揺さぶる本に出逢ったのは初めてだった。
関連する文学賞
- ナショナル・ブック賞(翻訳文学) 第3回(2020年) ・ロングリスト