悲しみのゴンドラ 増補版
トーマス・トランストロンメル(1931–2015)はスウェーデンを代表する詩人であり、1990年のノイシュタット国際文学賞は特定の一作ではなく、その生涯にわたる詩業全体に対して授与された。1954年の処女詩集『17篇の詩』から始まり、10冊以上の詩集にわたって、夢と現実の境界、自然と人間の内面、記憶と時間の流れを透明な言語で描き続けた。60以上の言語に翻訳され、後の2011年にはノーベル文学賞を受賞している。
Work Information
夢と覚醒の境界、自然と内面の深部を、透き通るような言語で照らし出す詩業が高く評価された。
ノイシュタット国際文学賞は特定書籍への賞ではなく、著者の文学的生涯業績を称えるものである。トランストロンメルの代表的日本語訳詩集として『悲しみのゴンドラ 増補版』(エイコ・デューク訳、思潮社、2011年)がある。原語スウェーデン語の詩集全体をカバーする英語版として『The Great Enigma: New Collected Poems』(ロビン・フルトン訳、New Directions、2006年)がある。詩集は1954年の『17 Poems』(17篇の詩)から始まり、自然の細部、夢と現実の混じり合い、人間存在の謎を、圧縮された詩語で描き続けた。その詩業は60以上の言語に翻訳され、ノーベル文学賞(2011年)でも最高の評価を受けた。
Review Summaries
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北欧の詩壇だけにとどまらず、世界文学に深く影響を与えた詩人として高く評価されている。簡潔かつ鮮烈なイメージによって日常の中に潜む神秘を描く筆致は、多くの詩人・読者に影響を与えた。
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ノイシュタット賞選考委員の推薦理由として「現代の最も平凡な現実に命を吹き込み、詩的世界観の地平を大きく押し広げた」と評された。政治的中立を保ちながら人間の苦しみへの深い共感を持ち続けたことも高く評価された。
Book Information
- Publisher
- 思潮社
- Published
- 2011-11-01
- Pages
- 105 pages
- Language
- 日本語
- ISBN-13
- 9784783728931
- ISBN-10
- 4783728933
- Price
- 2640 JPY
- Category
- 本/文学・評論
Amazon.co.jp: 悲しみのゴンドラ 増補版 : トーマス トランストロンメル, Transtr¨omer,Tomas, Duke,Eiko, デューク,エイコ: 本
Reviews
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日本人なら共感できる、「俳句の精神」で書かれた詩
2011年のノーベル文学賞受賞者・トランストロンメルの唯一の日本語訳詩集です。 トランストロンメルは日本の俳句に造詣が深く、特に正岡子規を絶賛していました。 トランストロンメルの詩は「俳句の精神」が貫かれています。 例えばこのようなもの。 >高圧線の幾すじ/凍れる国に絃(げん)を張る/音楽圏の北の涯(は)て >蘭(らん)の花の窓/すべり過ぎ行く油槽船/月の満ちる夜 日本とは気候風土も歴史も全く違うスウェーデンで作られた詩ですから、 日本の俳句のような「花鳥風月」を詠んだものではありません。 しかし、「厳選された短い言葉で奥深いものを表現する」という 俳句の精神は、日本人にもきっと共感できるでしょう。 人への贈物にするのもおすすめな本です。 薄い本なので、1つ1つの詩を味わいながらゆっくり読んでほしいです。
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独特の詩世界
2011年のノーベル文学賞受賞者、スウェーデンの詩人(心理学者でもある)トーマス・トランストロンメル氏の唯一の邦訳詩集です。詩人の同賞受賞は16年ぶりとか。いちポエム好きとしては嬉しい出来事でした。 表題『悲しみのゴンドラ』は音楽家リストの作品名から来ているようです。トランストロンメル氏はピアノ演奏も得意としており「わたしの詩は、本来なら音楽で表現されるべきものの埋め合わせといえよう」とまで言っているそうなので、スウェーデン語の原詩の音律で作品を味わえないのが非常に惜しまれますが、邦訳でも世界観は伝わると思います。いずれアルファベットの発音だけ勉強するとかして原詩に挑むとしても何の基礎もなくいきなりでは厳しいので、やはり邦訳は参考になります。感謝です。 詩のイメージとしては、アフマートヴァとかクァジモド等の詩人たちのものと近いという印象を受けました。本作に収められている詩はすべて短編で、俳句も取り入れているというだけあり表現は簡潔です。本作の表紙は青と白ですが、トランストロンメル氏の詩ではまさに水や氷、空、海、雲、魚、そして宇宙といった、青と白のイメージをもつ言葉が多用されています。詩人の母国スウェーデンの景色がそこに表されてもいるのでしょうか。簡明な表現が作り出す不思議な透明感と緊張感は氷の山々と凍てつくような冷気、白く吐き出されて消えていく息を連想させます。 本書に収録された詩は22編。1ページあたりの文字数も少なく、すぐ一読できますので、少しでも興味のあられる方はぜひお手にとってみてください。 ノーベル賞受賞を機に、もっと同氏の詩集が日本で刊行され入手しやすくなることを祈りつつ。
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国や言語の違いを越えて響いてくるもの
訳者の解説によれば、スウェーデンの国民詩人的な存在らしい。病後の復活が国内メディアで脚光を浴びるといった表現者のあり方は日本ではなかなか想像しにくいけれど、それはむしろ日本の近代の特殊さゆえかもしれない。 トランストロンメルさんの特質はその絵画性と音楽性とのことですが、原語を読めない読者としてはもどかしいところがある。それでも詩人本人をよく知る訳者のていねいな訳を二度三度と読んでいくと、浮かび上がってくるきらめき、病気や老年による孤独とそれを受け入れるふところの深さを感じる。 「みずからの影に運ばれるわたしは/黒いケースにおさまったヴァイオリンそのもの。//わたしのいいたいことが ただひとつ/手の届かぬ距離で微光を放つ/質屋に置き残された/あの 銀器さながら。」(「四月と沈黙」より) そして日本の俳句に深く親しんで作った「俳句」(十七音?)は、訳の力も借りて、国や言語の違いを越えて響いてくるものを感じた。いいものを読ませてもらったという思い。二つだけ引いておきます。 「見てごらんわたしの坐りかた/汀に曳き揚げられた小舟のかたち。/これはしあわせだ。」 「ひそかな雨の青。/わたしは秘密ひとつをささやき/響き合わせる。」