-
第2回(1958年) 受賞受賞作: Epstein
フィリップ・ロス
フィリップ・ロス
Philip Roth
プロフィール
- 性別
- 男性
- 生誕
- 1933-03-19 (アメリカ合衆国ニュージャージー州ニューアーク)
- 死没
- 2018-05-22 (アメリカ合衆国ニューヨーク市) 85歳
- 国籍
- アメリカ合衆国
- 言語
- 英語
- 宗教
- 無宗教(無神論)
- 居住地歴
- ニューアーク(ニュージャージー州) → マンハッタン(ニューヨーク市) → アナンデール・オン・ハドソン(ニューヨーク州、バード大学近傍)
経歴
- 職業
- 小説家, 短編作家, 随筆家, 大学教員
- 活動期間
- 1959年〜2010年
- 所属
- ペンシルベニア大学(比較文学 教員)
- 所属団体
- フィリップ・ロス・ソサエティ(Philip Roth Society)
- 影響を受けた人物
- フランツ・カフカ, ヘンリー・ジェイムズ, ジョセフ・コンラッド, フョードル・ドストエフスキー, ソール・ベロー
- 影響を与えた人物
- ジョナサン・サフラン・フォア, ジョナサン・レザム, 現代のアメリカ小説家たち(多くの作家に影響)
学歴
| 学校 | 学部 | 学科 | 学位 | 期間 | 国 |
|---|---|---|---|---|---|
| バッグネル大学(Bucknell University) | — | — | BA | — | アメリカ合衆国 |
| シカゴ大学(University of Chicago) | — | 英文学 | MA | 1954–1956 (在籍/研究期間は短期間のことがあった) | アメリカ合衆国 |
受賞歴
| 年 | 賞名 | 対象作品 | 部門 | 主催 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1960 | ナショナル・ブック賞(フィクション) | グッバイ・コロンバス | — | ナショナル・ブック財団 | 受賞 |
| 1998 | ピューリッツァー賞(フィクション) | アメリカン・パストラル | — | ピューリッツァー賞委員会 | 受賞 |
| 1994 | PEN/Faulkner賞 | オペレーション・シャイロック(Operation Shylock) | — | PEN/Faulkner 財団 | 受賞 |
| 2001 | PEN/Faulkner賞 | ザ・ヒューマン・ステイン | — | PEN/Faulkner 財団 | 受賞 |
| 2007 | PEN/Faulkner賞 | エブリマン | — | PEN/Faulkner 財団 | 受賞 |
| 2001 | フランツ・カフカ賞 | — | — | フランツ・カフカ財団(プラハ) | 受賞 |
| 2011 | マン・ブッカー国際賞(生涯業績) | — | — | マン・ブッカー賞財団 | 受賞 |
| 2010 | ナショナル・ヒューマニティーズ・メダル | — | — | アメリカ国家芸術文化団体 | 受賞 |
受賞・候補エディション
-
第14回(1994年) 受賞受賞作: Operation Shylock
『Operation Shylock』は、自身を想起させる作家を主人公に据えたメタフィクション。イスラエルを舞台にして模倣と本物、アイデンティティや民族的帰属の不確かさを鋭く問う寓話的長編である。
作家そっくりの主人公が、真実と虚構を揺らす。
398ページメタフィクションアイデンティティユダヤ人問題政治 -
第21回(2001年) 受賞受賞作: The Human Stain
『The Human Stain』は、大学教授を中心に、人種的出自や過去の秘密が暴かれることで生じるスキャンダルと孤立を描く。学界やメディアの視線、偏見と個人の責任、赦しの可能性を通してアメリカ社会の道徳と偽善を問う作品。
秘密が暴かれたとき、個人と社会の倫理が揺らぐ。
アイデンティティ人種スキャンダル学界の倫理メディアと真実 -
第27回(2007年) 受賞受賞作: Everyman
『Everyman』は老いや病と向き合う一人の男の回想を通して、家族、後悔、罪意識、そして死の問題を掘り下げる作品。平凡な人間の生涯の断片を通して普遍的な喪失感と赦しを静かに描く長篇である。
182ページ老い死家族後悔アイデンティティ
-
第82回(1998年) 受賞受賞作: アメリカン・パストラル(American Pastoral)
理想的なアメリカ人として見えたスウェード・レイヴォフの家庭が、1960年代の政治暴力と個人の崩壊によって壊れていく。
幸福に見えた人生の裏で、国家の混乱が家族を蝕む。
423ページアメリカの夢家族1960年代崩壊
-
第1回(1998年) 受賞受賞作: American Pastoral
1950年代のアメリカ中西部を舞台に、外面上は成功した主人公の家庭が、娘の政治的事件や社会の変化によって徐々に崩壊していく過程を描く。家族の喪失を通してアメリカン・ドリームと社会的分断を深く問いかける長編。
家族の崩壊アメリカン・ドリーム政治と社会の分断個人と公共
-
第14回(1999年) 受賞受賞作: I Married a Communist
冷戦期の政治的緊張と個人の関係性を描く長篇。政治的対立と個人の裏切り、記憶の曖昧さが交錯し、社会的雰囲気と私的な痛みを重層的に描写する。
冷戦政治と個人裏切り記憶
-
第1回(2001年) 受賞受賞作: 受賞作なし(作家の業績に対する表彰)
フランツ・カフカ賞の第1回受賞は、フィリップ・ロスの長年の業績をたたえる生涯業績賞として行われた。単一作品に結びつく受賞ではなく、ユダヤ系アメリカ文学を軸に、自己省察と社会への鋭い視線を重ねてきた作家活動全体が評価されている。
単一の受賞作ではなく、フィリップ・ロスの作家人生そのものを讃える受賞。
生涯業績ユダヤ系アメリカ文学自己省察現代アメリカ社会
-
第16回(2001年) 受賞受賞作: American Pastoral
アメリカン・ドリームの崩壊を背景に、成功した父親が政治的過激行為に走る息子と向き合う姿を描く。個人の責任と社会変動が家族をどう蝕むかを冷徹に検証する長編。
アメリカン・ドリームの崩壊政治と個人家族の崩壊
-
第60回(2002年) 特別賞受賞作: アメリカ文学への顕著な貢献(Medal for Distinguished Contribution to American Letters)
2002年の全米図書賞では、Philip Rothがアメリカ文学への顕著な貢献を称える生涯功績メダルを受けた。小説家としての長年の仕事が評価の中心であり、単一の書籍を対象とするものではない。
作品ではなく、文学文化を支えてきた生涯の仕事への表彰。
生涯功績アメリカ文学文学賞
-
受賞作: The Human Stain
大学教授コールマン・シルクは、授業中の発言をめぐる人種差別の疑惑で解雇される。追及の過程で彼の出生や隠された過去が明らかになり、アイデンティティ、恥、社会の偏見、記憶の扱いを巡る人間模様とアメリカ社会の病理が鋭く描かれる。
The Human Stain
アイデンティティ人種偏見記憶アメリカ社会
-
第10回(2004年) 受賞受賞作: The Plot Against America
チャールズ・リンドバーグが大統領となり反ユダヤ主義と権威主義が台頭したという別歴史を、ユダヤ系アメリカ人の一家の視点から描く長篇。日常の崩壊と政治的恐怖が家族に与える影響を細やかに描写する社会小説。
代替歴史反ユダヤ主義アメリカ政治家族
-
第21回(2006年) 候補受賞作: Salajuoni Amerikkaa vastaan
-
第4回(2011年) 受賞受賞作: 受賞業績(生涯の業績に対する表彰)
多様な長篇群を通してアメリカ社会や個人の内面を鋭く描き出し、批評的・文学的に大きな影響を与えたことが評価されての受賞である。
アイデンティティアメリカ社会ユダヤ人の経験
-
第32回(2012年) 受賞受賞作: 物語的業績(代表作:『ポートノイの不満』ほか)
ロスはユダヤ系アメリカ人の経験、性、政治、個人的葛藤を主題に、鮮烈な語り口と深い心理描写で現代社会を描出した。代表作を通して自己と社会の緊張を露わにし、アメリカ小説の伝統に新たな視座をもたらした。
アイデンティティユダヤ系アメリカ人社会批評個人の葛藤
作品
代表作
グッバイ・コロンバス
1959年 短編集(中編含む)中編『グッバイ・コロンバス』と短編四編を収めた初期作品。中産階級ユダヤ系アメリカ人の生活をユーモアと辛辣さで描く。
- [映画] グッバイ・コロンバス(映画) / Larry Peerce (1969)
- グッバイ・コロンバス
ポートノイの不満
1969年 小説(ブラックユーモア/自伝的要素)主人公の告白形式で性的欲望やユダヤ人としての葛藤、自己同一性を過激に描き、発表当時論争を巻き起こした代表作。
- ポートノイの不満
サバスの劇場
1995年 小説(風刺/ブラックユーモア)堕落した元パペッティアの主人公ミッキー・サバスを通して、欲望、老い、倫理を露骨かつユーモラスに描く作品。1995年のナショナル・ブック賞受賞作。
- サバスの劇場
アメリカン・パストラル
1997年 小説(文学フィクション/アメリカ三部作の一部)ニュージャージー出身の成功した実業家スウィード・レヴォフの家庭に起きる悲劇を通じて、1960年代のアメリカ社会と理想の崩壊を描く。ピューリッツァー賞受賞作。
- [映画] アメリカン・パストラル(映画) / Ewan McGregor (2016)
- アメリカン・パストラル
ザ・ヒューマン・ステイン
2000年 小説(アイデンティティ/社会評論)古典学教授コールマン・シルクの過去と秘密が明らかになっていく過程を通じ、アイデンティティ政治とアメリカ社会の偏見を描く作品。映画化もされた。
- [映画] ザ・ヒューマン・ステイン(映画) / Robert Benton (2003)
- ザ・ヒューマン・ステイン
ザ・プロット・アゲインスト・アメリカ
2004年 小説(代替歴史)もしチャールズ・リンドバーグが1940年に大統領になり、アメリカ政府が対独協調的政策をとったらという代替歴史を通して、反ユダヤ主義と恐怖が家庭や共同体に与える影響を描く。
- [テレビ(ミニシリーズ)] The Plot Against America(HBO ミニシリーズ) (2020)
- ザ・プロット・アゲインスト・アメリカ
全著作
- グッバイ・コロンバスと五つの短編
- レッティング・ゴー
- ポートノイの不満
- ザ・ゴースト・ライター
- ザ・カウンターライフ
- アメリカン・パストラル
- ザ・ヒューマン・ステイン
- ザ・プロット・アゲインスト・アメリカ
- エブリマン
- ネメシス
翻案
- 『グッバイ・コロンバス』映画化(1969)
- 『ザ・ヒューマン・ステイン』映画化(2003)
- 『エレジー』(『The Dying Animal』の映画化、2008)
- 『インディグネイション』映画化(2016)
- 『アメリカン・パストラル』映画化(2016)
- 『ザ・プロット・アゲインスト・アメリカ』HBOによるミニシリーズ化(2020)
作品の翻訳
- ポートノイの不満 — 日本語訳
- アメリカン・パストラル — 日本語訳
作風・主題
- 文体
- 自伝的要素を強く含むリアリスティックな文体挑発的で直接的な語り口現実と虚構を曖昧にするメタフィクション的手法
- 頻出モチーフ
- ユダヤ性と同化の葛藤性的欲望と罪悪感老い・死・病アメリカン・ドリームの挫折
健康
-
術後の神経症的崩壊(精神的な不調)1980s(術後)作品に自己分裂や幻視的要素をもたらし、いくつかの作品の主題に影響を与えた
-
ハルシオン(トリアゾラム)による一時的な副作用1980s(処方期間)短期間の精神的副作用を経験し、作品や創作活動に影響を与えた
-
心不全(死因)2018(死去時)2018年に心不全で逝去
評価・遺産
フィリップ・ロスは20世紀後半から21世紀初頭にかけての代表的なアメリカ作家の一人。ユダヤ性、自己、アメリカの記憶をめぐる深い洞察と挑発的な文体で広く評価され、多数の主要文学賞を受賞したがノーベル賞には届かなかった。遺贈資料や個人図書館は研究資料として重要視されている。
記念館・博物館
- フィリップ・ロス個人図書館(ニューアーク公共図書館所蔵) ニューアーク公共図書館、ニューアーク(ニュージャージー州)、アメリカ合衆国 2021年開館
関連学会
- Philip Roth Society
資料所蔵先
- シカゴ大学特別コレクション(作品初期資料)
- プリンストン大学ファイアストン・ライブラリ(譲渡された一部手稿)
大衆文化への影響
- ロスの作品は映画・テレビ化され、HBOのミニシリーズ化などで広く紹介された
引用
-
世界中の誰も神を信じなくなったら、それは素晴らしい場所になるだろう。
出典: インタビュー/引用集 (2011年) -
小説を読むことはある種の献身と集中を要求する。25年以内に小説の読書は『カルト的』行為と見なされるだろうと思っていた。
出典: インタビュー(The Guardian / The Daily Beast 等) (2009年)
豆知識
- ニューアーク公共図書館に自身の蔵書と200万ドル以上を遺贈した。
- 葬儀で宗教的儀式を禁じたが、その後ユダヤの伝統に従い墓石に石が置かれた。
- PEN/Faulkner賞を3回受賞した唯一の人物である。
- 生涯で多くの主要賞を受賞したがノーベル文学賞は受賞していない。