インターナショナル・ブッカー賞
いんたーなしょなるぶっかーしょう
英語に翻訳され英国またはアイルランドで出版されたフィクション作品に贈られる国際文学賞。2016年以降は単作品を対象に年1回授与され、賞金£50,000は著者と翻訳者で等分される。
- 創設年
- 2005
- 主催
- Booker Prize Foundation
- カテゴリー
- 研究・翻訳・学術
- 選考方式
- 推薦
- 受賞対象
- プロ
- 開催頻度
- 年1回
- 締切時期
- 3月頃
- 発表時期
- 5月頃
- 賞のステータス
- 活動中
説明
2005年に設立された国際文学賞。2005–2015年は隔年で生存作家の業績(作家のキャリア)を対象に授与されていたが、2016年に制度を変更し、英語に翻訳され英国またはアイルランドで出版された単一のフィクション作品(長編・短編集を含む)に対して毎年授与される年次賞となった。受賞賞金は£50,000(原則として著者と翻訳者で折半)で、ショートリスト入りの著者と翻訳者には各£2,500が支払われる。Booker Prize Foundationが主催し、2019年以降はCrankstartなどの支援も受けている。目的は翻訳文学の普及、翻訳者の可視化、国際的な文学交流の促進である。
賞品
- 主賞品
- 受賞作には£50,000が授与され、原則として著者と翻訳者が等分して受け取る(各£25,000)。
- 賞金
- 50,000 GBP
- ショートリスト入りの著者と翻訳者は各£2,500を受領
- 2005–2015年は隔年で£60,000の賞金(作家の業績を対象)および翻訳者賞£15,000が設けられていた
- 受賞・候補作は国際的な注目と販売促進の機会が高まる
選考情報
選考プロセス
| 段階 | 審査員 | 通過率 | 発表 |
|---|---|---|---|
| 一次選考(長list) | 年ごとに選任される審査員パネルが選出(長listは通常12〜13冊、通称 'Booker Dozen') | — | 3月に長listを公式サイト上で発表 |
| 二次選考(ショートリスト) | 同じ審査員パネルが長listから6冊のショートリストを選定 | — | 4月にショートリストを発表 |
| 最終選考(受賞) | 審査員パネル(通常5名、チェア含む)が討議・投票で受賞作を決定 | — | 5月に受賞作を発表(式典や公式サイト、プレスで公表) |
| 2005–2015(旧フォーマット) | 隔年で選任された審査員が作家の業績を評価して受賞者を決定 | — | 隔年に受賞者を発表(例: 2005, 2007, …, 2015) |
選考基準
- 英語に翻訳され、英国またはアイルランドで出版されていること(2016年以降の主要条件)
- フィクション(長編・短編集)が対象であること
- 翻訳の質(文学的完成度)と原作の文学性を重視すること
- 作品の独創性、表現力、国際的な貢献度を評価すること
- 応募は主に出版社等によるノミネーション方式で行われること
応募のヒント
推奨
- 翻訳の質にこだわり、原作の声を英語で忠実に再現する
- 英国またはアイルランドでの英語版出版を確認する(応募条件)
- 出版社を通じて正しいノミネーション手続きを踏む
- 編集・校閲を徹底し、訳者と緊密に連携する
注意
- 未出版の英語訳や自己出版だけの英語版で応募しない(要件に合致しない場合がある)
- 翻訳の未校正・粗い訳文のまま提出しない
- ジャンルや出版要件を無視して応募しない
審査員から
- 翻訳の文学的完成度と原作の独自性を示すことが重要
- 短くても精緻な表現(brevity and precision)が高く評価されることがある
- 翻訳者の仕事も受賞評価に直接影響するため、訳の質と出版の仕上がりを重視する
関連の賞
- Booker Prize
- Franz Kafka Prize
- International Dublin Literary Award
- Man Asian Literary Prize
- National Book Award
- Neustadt International Prize for Literature
- Prix Goncourt
- Warwick Prize for Women in Translation
- List of literary awards
公式情報
https://thebookerprizes.com/the-international-booker-prize過去の受賞者
カンナダ語で書かれた12篇の短編で、南インドのムスリム共同体に生きる女性や少女たちの日常を描く。家族、信仰、階層、抑圧の摩擦を、乾いたユーモアと鮮やかな口語で浮かび上がらせる。
南インドの女性たちの暮らしを、静かな怒りとユーモアで描き出す12篇。
インドの作家。カンナダ語の短編を中心とした短編集『Heart Lamp: Selected Stories』の英訳(Deepa Bhasthi訳)で2025年に国際ブッカー賞を受賞した。
山あいの故郷に戻った娘と母を軸に、過去に起きた惨事と、その土地に残る傷の記憶が静かに立ち上がる長編。家族の沈黙と土地の歴史が、世代をまたいで絡み合う。
母と娘の沈黙の下から、山の土地に埋もれた過去が浮かび上がる。
ドイツの作家。時間と記憶、個人史をめぐる叙情的で哲学的な作品を手がけ、翻訳者とともに小説『Kairos』で2024年の国際ブッカー賞を受賞した。
認知症患者のために過去の時代を再現する施設が、やがて社会全体の過去への逃避と政治的ノスタルジアへ広がっていく過程を描く長編。英訳版が2023年の国際ブッカー賞を受賞した。
ブルガリアの作家で詩人・小説家。記憶とノスタルジアを主題とする作品群で知られ、2023年に『Time Shelter』で国際ブッカー賞を受賞した。
『Tomb of Sand』は、夫の死をきっかけに新たな人生へ踏み出す高齢女性を中心に、家族史、パーティションの記憶、国境をまたぐ移動を多声的に描く長編。ユーモアと実験性が共存し、翻訳文学としての広がりも大きい。
老いと記憶を、ユーモアと実験性で押し広げる長編。
インドのヒンディー語作家。高齢の女性とその家族を巡る大河的な物語と、分断の記憶を多声的に織り上げた『Tomb of Sand』で2022年に国際ブッカー賞を受賞した。
第一次世界大戦の塹壕で友を失ったセネガル兵アルファの内面を追い、悲嘆、復讐、植民地主義下の戦争体験が精神を蝕む過程を描く長編。英訳版が2021年の国際ブッカー賞を受賞した。
フランスで活動する作家。戦争の経験と植民地主義の視点を鋭く描いた『At Night All Blood Is Black』で2021年の国際ブッカー賞を受賞した。
農村の厳格なキリスト教家庭で育つ少女の視点を通して、弟の事故死を契機に家族の悲嘆や抑圧された欲望、境界の揺らぎを描く。詩的かつ衝撃的なイメージで喪失と孤立、想像力による逃避と抵抗を生々しく掬い取り、思春期と宗教的慣習が交錯する家庭の崩壊を鮮烈に示す長編。
農村の厳格なキリスト教家庭で育つ少女の視点を通して、弟の事故死を契機に家族の悲嘆や抑圧された欲望、境界の揺らぎを描く。
オランダ出身の作家。デビュー作『The Discomfort of Evening』で国際的に注目され、2020年に国際ブッカー賞を受賞した。若い感受性と過激なイメージを用いた作風で知られる。
オマーンの家族と女性たちの生活を通して、結婚、身分、社会変化の重なりを静かに描く。
オマーンの家族と女性たちの生活を通して、結婚、身分、社会変化の重なりを静かに描く。
オマーン出身の作家。地方社会の家族史や女性の視点を通じて、社会階層や歴史的な遺産を丁寧に描く。2019年に英訳された『Celestial Bodies』で受賞し、アラビア語作品としての初受賞となった。
旅、移動、身体、解剖、死者の痕跡をめぐる断章が連なり、固定された場所にとどまらない人間の存在を描く実験的長編。短篇、随想、逸話が互いに反響し、移動し続けることの不安と自由を浮かび上がらせる。
移動する身体と記憶の断章が、旅そのものを生のかたちとして照らし出す。
ポーランドの作家。断片的かつ哲学的な語りで移動や身体、境界を巡る物語を織り上げる。2018年は旅と存在を問う長篇『Flights』の英訳で国際的評価を受けた。
スタンドアップ・コメディアンの一夜の公演を舞台にした長篇。笑いと怒り、告白と暴露が交錯する語りを通じて、個人的喪失とトラウマ、社会的傷を浮き彫りにし、ユーモアと悲劇が同居する構成で強い印象を残す作品である。
スタンドアップ・コメディアンの一夜の公演を舞台にした長篇。
イスラエルの小説家。個人的喪失や社会的トラウマを人間味あふれる語りで描く作家で、2017年は舞台性の強い長篇『A Horse Walks into a Bar』の翻訳と共に受賞した。
肉食を拒むようになった女性ヨンヘと、その変化に巻き込まれる家族を三部構成で描く長編。身体、欲望、暴力、家族の規範をめぐる寓話的な作品で、英訳版が2016年の国際ブッカー賞を受賞した。
韓国の小説家。詩的で寓意的な筆致を用い、個人と社会の緊張を身体的変化や拒絶を通じて描く作家。2016年は翻訳者と共に単著『The Vegetarian(菜食主義者)』で受賞した。
この受賞は単一作品ではなく、作家ラスロー・クラスナホルカイの長年の業績を顕彰するもの。長文体と寓話性を通じて近代社会や存在の問題を追究してきた点が評価された。
単一作品ではなく、作家の業績全体に与えられた国際賞。
ハンガリーの小説家。長大で実験的な一文体や歴史的寓話を用いた作風で知られ、存在や近代性をめぐる重厚なテーマを探求してきた長年の業績が評価され受賞した。
短篇の極致ともいえる凝縮された作品群や高い翻訳成果を通じて、言語の選択と文体の鋭さを示し、短篇文学に新たな地平を開いた業績が評価された。
アメリカの短編作家・翻訳家。極めて短い形式で精密な言語実験を行い、短篇の詩的可能性を切り拓いた作家として評価され、生涯業績で受賞した。
多様な長篇群を通してアメリカ社会や個人の内面を鋭く描き出し、批評的・文学的に大きな影響を与えたことが評価されての受賞である。
アメリカの小説家。個人の欲望やアイデンティティ、ユダヤ系アメリカ人の経験を通じて社会と個の衝突を描く作風で知られる。生涯の業績を評価され2011年に受賞した。
長年にわたる短編群を通して、日常の微細な感情や人間関係の機微を精緻に描き出し、短篇という形式の可能性を拡張した業績が評価されての受賞である。
長年にわたる短編群を通して、日常の微細な感情や人間関係の機微を精緻に描き出し、短篇という形式の可能性を拡張した業績が評価されての受賞である。
カナダの短編小説家。日常の細部と人物の心理を繊細に描く技巧で知られ、短篇文学の国際的評価を高めた。2009年にその生涯の業績が評価され受賞した。
植民地主義と文化的アイデンティティの対立を描いた作品群により、アフリカ文学の礎を築いた業績が評価された。代表作を通じて世界文学に影響を与えたことが受賞理由となった。
アフリカ文学の礎を築いた作家の生涯業績が評価された。
ナイジェリア出身の小説家。植民地主義と伝統社会の衝突を人間的な視点で描き、アフリカ文学の国際的認知に大きく貢献した。2007年に生涯の業績として本賞を受賞した。
寓話的な語りと歴史への鋭い洞察で知られるアルバニアの作家。独裁期の記憶や権力の寓話化を通じて近現代史を問う作品群が国際的に評価され、生涯の業績として本賞が贈られた。
寓話的な語りと歴史への洞察で知られるアルバニアの作家。
アルバニア出身の小説家。寓話的な語りと歴史への洞察を通じて独裁や民族的記憶を描き、国際的に高い評価を受けた。2005年にMan Booker International Prize(初代)を生涯業績として受賞した。