ベイリー・ギフォード賞(ノンフィクション)
べいりー・ぎふぉーど・ぷらいず
英語で英国出版された優れたノンフィクション作品に贈られる英国の年次ブックプライズ。
- 創設年
- 1999
- 主催
- The Baillie Gifford Prize(運営:The Samuel Johnson Prize for Non-fiction Limited)
- カテゴリー
- ノンフィクション・記録文学
- 選考方式
- 公募
- 受賞対象
- 不問
- 開催頻度
- 年1回
- 発表時期
- 11月頃
- 賞のステータス
- 活動中
説明
Baillie Gifford Prize for Non-Fiction(旧 Samuel Johnson Prize)は1999年創設の英国の年次ノンフィクション賞。モットーは “All the best stories are true”。時事・歴史・政治・科学・スポーツ・旅行・伝記・自伝・芸術など幅広いノンフィクション分野を対象とし、英語で英国で出版された作品(国籍不問)が応募可能。ロングリスト、ショートリストを経て毎年選考パネルが受賞作を決定する。2016年以降主要スポンサーはBaillie Gifford、2019年に賞金が£50,000に増額された。賞は非営利組織The Samuel Johnson Prize for Non-fiction Limitedの理事会によって運営される。
賞品
- 主賞品
- 受賞者には賞金および授賞式での表彰。2019年以降の賞金は£50,000。
- 賞金
- 50,000 GBP
- ファイナリストへの副賞(過去には£1,000~£2,500の支給例あり、年により異なる)
- 授賞式への招待およびメディア露出
- 出版社によるプロモーション支援等
選考情報
選考プロセス
| 段階 | 審査員 | 通過率 | 発表 |
|---|---|---|---|
| ロングリスト(Longlist) | 独立した審査員パネル(年ごとに構成が変わる) | — | 公式サイトおよびメディアで発表 |
| ショートリスト(Shortlist) | 審査員パネルがロングリストから選出 | — | 公式サイトとプレスリリースで発表 |
| 受賞者決定(Winner) | 最終審査委員会がショートリストから選出 | — | 授賞式および公式サイトで発表 |
選考基準
- 英語で英国で出版されたノンフィクション作品であること(国籍不問)
- 取材の深さと正確性
- 文章・構成の質(読みやすさと表現力)
- 独創性と洞察力
- 公共性・社会的意義
応募のヒント
推奨
- 英語で英国で出版された版を応募する(出版証明を用意)
- 出版社や著者を通じて公式応募要項に従って提出する
- 取材・出典の明示、事実確認を徹底する
- 読みやすさと構成の明確化に注力する(編集済みの最終原稿を用意)
- 過去のロングリストやショートリストを参考に、審査傾向を把握する
注意
- 未出版の作品や英国出版要件を満たさない版で応募しない
- 事実確認が不十分なまま応募しない
- 応募要項に従わないフォーマットや不完全な提出をしない
- 過度に宣伝的・主張だけの原稿で応募しない
審査員から
- 取材の深さと一次情報の重要性を重視する
- ストーリーテリングと事実性の両立が評価される
- 明確で読みやすい文章と構成を心がけよ
- 独創的な視点や新しい洞察を示す作品が目立つ
関連の賞
- Samuel Johnson Prize(旧称)
- NCR Book Award(前身)
- 英国のノンフィクション系文学賞(一覧)
- The Royal Society Science Book Prize
- その他の英国の文学賞・ブックプライズ
公式情報
http://www.thebailliegiffordprize.co.uk/過去の受賞者
『Question 7』は、愛、家族史、戦争の記憶、科学史が一本の連鎖としてつながる、境界のあいまいなノンフィクションである。日本の内海からタスマニアの川へと広がる語りのなかで、個人の人生が偶然と他者の物語によって形づくられることを描く。
偶然の連鎖が、個人史を世界史へと開いていく。
オーストラリアの小説家・作家。国際的に評価される長編を多数発表している。2024年の受賞作は『Question 7』とされる。
『Fire Weather』は、2016年のフォートマクマリー大火を軸に、石油産業、気候変動、そして火災と人間社会の関係を追うルポルタージュである。炎そのものを主役に据えながら、災害の背景にある歴史と現在を重層的に描き出す。
火災は、都市と産業と気候の結び目として立ち現れる。
カナダ出身の作家でルポルタージュ作家。自然、動物、環境問題をテーマにした長編ノンフィクションで知られ、現場の描写と科学的文脈の提示に定評がある。
『Super-Infinite』は、John Donne の生涯と詩を軸に、愛、信仰、政治、喪失が複雑に絡み合う伝記的ノンフィクションである。学者であり聖職者であり、同時に時代の矛盾を生き抜いた人物として Donne を描き直し、その言葉の現代性を鮮やかに示す。
詩人 John Donne の多面体の生涯を、今の読者に響く伝記として読み直す。
イギリスの作家。児童文学や随筆で知られる一方、文学研究や詩人論にも定評があり、文学的な洞察と読みやすさを両立させる作品を発表している。
サックラー家とその製薬企業の台頭が米国のオピオイド危機に与えた影響を、内部文書や訴訟記録、被害者の証言を通じて明らかにする調査報道。企業責任、規制の弱さ、富と権力が社会に及ぼす害を精緻に描く。
サックラー家とその製薬企業の台頭が米国のオピオイド危機に与えた影響を、内部文書や訴訟記録、被害者の証言を通じて明らかにする調査報道。
アメリカの調査ジャーナリスト・作家。長編ノンフィクションで企業・社会問題や犯罪の内幕を追い、綿密な資料調査と語りで現代の複雑な事象を明らかにする。
ビートルズの歩みを年表的・エッセイ的に編纂し、楽曲や活動の変化、各メンバーの人生や時代背景を逸話と批評で織り交ぜながら描く評伝的作品。文化史としてのビートルズの位置づけと影響を軽妙な筆致で俯瞰する。
ビートルズの歩みを年表的・エッセイ的に編纂し、楽曲や活動の変化、各メンバーの人生や時代背景を逸話と批評で織り交ぜながら描く評伝的作品。
イギリスの作家・風刺家。新聞・雑誌での風刺や文化批評で知られ、人物や出来事をユーモアと洞察で描く。文化史的な視点でポップカルチャーを整理する著作が多い。
ジャック・ザ・リッパーの被害者としてしか記憶されてこなかった五人の女性の生涯を、社会史の視点から描き直すノンフィクション。犯罪者ではなく、犠牲者たち自身の生活と背景を前面に出す。
有名な殺人事件を、見落とされてきた女性たちの側から読み替える。
イギリスの歴史作家。犯罪史や社会史の観点から女性の暮らしや貧困を掘り下げる研究・著述で知られる。『The Five』でジャック・ザ・リッパー事件の被害者に焦点を当て歴史観を再構築した。
一九八六年のチェルノブイリ原発事故を、技術的失敗、ソ連体制の隠蔽、現場の判断、被災者の経験から再構成する歴史ノンフィクション。事故の瞬間だけでなく、その後の避難、情報統制、政治的帰結までを描き、核技術と国家権力の危うさを示す。
炉心の爆発は、技術の失敗であると同時に、情報を閉ざす国家の失敗でもあった。
ウクライナ出身の歴史家で、東ヨーロッパとロシアの歴史を専門とする。国際的に多数の歴史書を執筆し、政治史や文化史の観点から地域研究を行う。
David Franceによる『How to Survive a Plague: The Inside Story of How Citizens and Science Tamed AIDS』。AIDS activistsやResearchを軸に、AIDS (Disease)まで射程に入れる評伝。
AIDS activistsのなかで、Researchが立ち上がる。
米国の作家・映画監督。HIV/AIDSを巡る活動家と科学者の闘いを描いた作品で知られ、当事者視点の記録に定評がある。
『East West Street』は国際刑法における「ジェノサイド」「人道に対する罪」の成立過程を追い、著者自身の家族史やナチス期の事件を手掛かりに法概念の起源を探る。個人的物語と法史を融合させ、20世紀の正義の理念を立体的に描き出す。
国際法を専門とする弁護士・学者。法廷活動と歴史研究を結び付けた著作で知られ、戦争犯罪や国際正義に関する啓発的な論考を発表している。
『NeuroTribes』は自閉症とその社会的理解の歴史をたどり、診断や支援の変遷、偏見と差別の構造を検証する。神経発達の多様性(neurodiversity)という視点から包括的な議論を提示し、当事者の声を重視する再考を促す。
米国のジャーナリスト。科学・技術・医療に関する解説や長編ノンフィクションで知られ、神経多様性に関する著作で国際的注目を浴びた。
『H Is for Hawk』は父の死を契機に雛のゴシホークを訓練する体験と著者自身の悲嘆を重ね合わせた回想録。猛禽との関係やトレーニングの細部、文学的引用を織り交ぜながら、喪失と癒し、野生と文化の交差を深く探る作品である。
イギリスの作家・詩人。猛禽類の訓練や自然観察を題材にした作品で知られ、個人的な喪失体験を文学的に昇華する能力に定評がある。
『The Pike』はイタリアの詩人ガブリエーレ・ダンヌンツィオの生涯を描いた評伝で、創作と政治的野心、戦争への傾倒を通して個人と時代の相互作用を描写する。文化史的視点で魅力と危うさを併せ持つ人物像を浮かび上がらせる。
イギリスの作家・批評家。文化史や人物伝を手掛け、歴史的文脈を丁寧に読み解く筆致で評価されている。
『Into the Silence』は第一次世界大戦後の英国社会と初期エベレスト遠征を重ね合わせて描く歴史ノンフィクション。ジョージ・マロリーらの挑戦と戦争が生んだ世代の精神を照射し、登山史と社会史を織り交ぜながら人間の冒険性を考察する。
カナダの人類学者・民族植物学者。フィールドワークを基盤にした文化と自然に関する著述で知られ、探検家としての経験を作品に生かしている。
1958年から1962年の中国大飢饉を、史料とデータで再検証する歴史研究。毛沢東体制の政策と情報統制が大量死を招いた過程を追う。
中国大飢饉を史料から再検証する決定版。
オランダ出身の歴史家で中国現代史の研究者。公的資料や地方文書に基づく丁寧な史料検証により、近現代中国に関する新しい解釈を提示している。
北朝鮮の市民六人の生活を通じて、閉ざされた国家の現実を描き出すルポルタージュ。家族、統制、飢餓の重さが記憶に残る。
国家の全体像を、個人の暮らしから見せる。
アメリカのジャーナリスト。長年アジアを取材し、特に北朝鮮に関する現地取材と脱北者の証言に基づくルポルタージュで国際的な評価を得ている。
Leviathan or, The Whale は、クジラとメルヴィルの世界 を通して ノンフィクション としての読み応えを示す作品。
クジラとメルヴィルの世界 を軸に、静かな余韻を残す。
イギリスの作家・批評家。海洋や自然史を題材にしたノンフィクションで知られ、文学と自然を結ぶ視点で多くの作品を発表している。
ヴィクトリア朝イギリスの実際の殺人事件を手がかりに、犯人探しと社会の空気を同時に描く歴史ノンフィクション。事件そのものよりも、それをめぐる観察と想像の働きが面白い。
犯人探しの先に、時代の顔が見えてくる。
イギリスの作家。歴史的犯罪や文化史を題材にしたノンフィクションで知られる。
イラク戦争後のグリーンゾーンを、現地で働いた記者の視点から描くルポルタージュ。安全地帯の内部にある混乱と官僚制、現実との断絶が生々しく伝わる。
安全地帯の内側ほど、現実は危うい。
アメリカのジャーナリスト。紛争地の現地報道や政治ジャーナリズムで知られる。
シェイクスピアの1599年を、劇作家としての飛躍と当時の政治状況の両方から描く歴史書。作品の成立背景を通して、劇そのものの輪郭もくっきり見えてくる。
シェイクスピアの転機を、ひとつの年から読む。
アメリカの文学研究者でシェイクスピア研究の権威。演劇史と文献学を基盤にした読み解きで知られる。
B. S. ジョンソンの生涯を、資料と証言をもとに立体的に追う伝記。実験精神に満ちた作家像と、孤独と破局をはらんだ人生が同時に見えてくる。
実験的作家の肖像が、伝記のかたちで立ち上がる。
イギリスの小説家。社会風刺やユーモアを交えた長編で知られるが、伝記やノンフィクションにも取り組む。
旧東ドイツで生きた人々と秘密警察の記憶を、証言と観察で掘り起こすルポルタージュ。制度の暴力が日常の感覚をどう歪めたかを、複数の声から浮かび上がらせる。
壁の向こう側の記憶を、声として拾い集める。
オーストラリアの作家。証言を重視した調査ノンフィクションで知られる。
ロシアの国民詩人アレクサンドル・プーシキンの生涯を、創作、政治、私生活の三つの側面からたどる伝記。帝政ロシアの圧力の中で作品と人格がどう形づくられたかを丁寧に描き、神話化された詩人像の奥にある人物像を立ち上げる。
詩人プーシキンの神話を、時代と人間の両面から読み解く。
英国のロシア文学研究者・作家。プーシキンなどロシア古典文学の研究と伝記で知られる。
マーガレット・マクミラン『Peacemakers』は、1919年パリ講和会議に焦点を当て、各国の指導者たちの判断と交渉がどのようにその後の世界秩序や紛争の発生に影響したかを解き明かす。領土決定、民族自決、外交的妥協の限界を史料に基づいて再検討する。
マーガレット・マクミラン『Peacemakers』は、1919年パリ講和会議に焦点を当て、各国の指導者たちの判断と交渉がどのようにその後の世界秩序や紛争の発生に影響したかを解き明かす。領土決定、民族自決、外交的妥協の限界を史料に基づいて再検討する。
カナダ出身の歴史学者。外交史や国際関係史の研究で知られ、講和会議や戦後秩序の分析で評価が高い。
ナチズムを政治宗教として捉え直し、第一次世界大戦後の失意から第三帝国の崩壊までを一続きの歴史として描く大作。社会構造、イデオロギー、暴力の結びつきを通史として読み解く。
第三帝国を、恐怖だけでなく制度と信仰の歴史として読む。
イギリスの歴史家・ジャーナリスト。ナチズムと戦時期のドイツ研究で著名。
デイヴィッド・ケアンズ『Berlioz: Volume 2』は、19世紀フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズの晩年近くまでの活動を扱う伝記の続編。作品の成立過程や音楽的発展、当時の評論・上演事情、作曲家の私生活と公的評価の変遷を丹念に追う。
ベルリオーズの後半生を追う、決定版的伝記の第2巻。
英国の音楽評論家・伝記作家。作曲家ベルリオーズの研究で高く評価される。
アンソニー・ビーヴァー『スターリングラード』は、第二次世界大戦の転換点となったスターリングラード攻防戦を、現地記録・軍事資料・兵士や市民の証言を織り交ぜて再構築する軍事史。戦場の極限状況、指揮判断、民間人の被害を克明に描き、戦争の残酷さと戦術的複雑性を浮き彫りにする。
スターリングラード攻防戦を、人間の視点から描く。
イギリスの軍事史家。二次大戦や戦史を一般向けにわかりやすく描く著作で国際的に知られる。