ナショナル・ブック賞(翻訳文学) なしょなるぶっくしょう(ほんやくぶんがく)
第5回(2022年)
受賞者
10名七つの短篇が、家の内部や記憶の綻びを通して、日常に潜む不穏さを浮かび上がらせる。身近な空間が少しずつずれていく感覚を、鋭い寓話性で描く短篇集。
家のなかの静けさが、やがて不穏なざわめきに変わる。
アルゼンチン出身の作家。短編を中心に不穏で寓話的な作風で国際的評価を受ける。
ノルウェーの海辺で暮らす画家アスレと、もう一人のアスレの記憶が交錯する終章。信仰、愛、芸術、時間の感覚を、ゆるやかで催眠的な文体でたどる。
二人のアスレが、人生と信仰の境界をゆっくりとたどる。
ルワンダの歴史、女性たちの記憶、ジェノサイドの影を、民話や伝承の感触を交えて描く小説。個人史と集団史が重なり合い、失われた声を拾い直す。
消された記憶を、伝承と声がそっと呼び戻す。
女子校の親密な関係が、怪談めいた儀式と欲望の高まりによって危うくほどけていく。思春期の不安をホラーとして増幅する、鋭い多声的な小説。
友情は、いつしか呪いのようにふくらんでいく。
言葉の違いとつながりの難しさを抱えた仲間たちが、散らばった世界のなかでコミュニケーションを模索する。ユーモアと不穏さをあわせ持つ、ディストピア的な友愛の小説。
ばらばらになった世界で、言葉だけが橋になろうとする。
スーフィーの思想家イブン・アラビーの生涯を、旅、欲望、信仰、知の探求を交えて描く歴史小説。精神史と冒険譚が重なる、広がりのある物語。
旅と思想が重なり、ひとりの神秘思想家の生が立ち上がる。
現代イランの圧力と息苦しさを背景に、記憶や沈黙、信仰の揺らぎを掘り下げる短篇集。抑圧の中で生きる人々の現実が、静かな緊張感で立ち上がる。
沈黙の下で、日常のひび割れが静かに広がる。
宇宙船を舞台に、人間と人間以外の働き手の記録が並び、労働や感情、身体の境界がゆっくり崩れていく。SFの形式で、人間らしさそのものを問い返す小説。
航行する船のなかで、働くことの意味が少しずつ変質する。
故郷へ戻る旅と記憶の断片をたどりながら、移民の体験と家族史を見つめ直す。個人的な出自を、静かな観察とユーモアで掘り下げる記録文学。
帰ることは、過去をもう一度言い直すことでもある。
18世紀のユダヤ教異端指導者ヤコブ・フランクとその周辺を軸に、宗教、帝国、欲望、暴力が交錯する大河小説。複数の視点が、歴史の複雑さを立体的に映し出す。
歴史の複数の声が、一人の人物をめぐって重なり合う。