ロサンゼルス・タイムズ ブック賞 ろさんぜるす・たいむず ぶっくしょう
第11回(1990年)
受賞者
7名膨大な未公開一次資料をもとに、歴史家ジェフリー・C・ウォードがフランクリン・ルーズヴェルトの前半生を描いた伝記の傑作。裕福な上流階級の家に生まれた青年が、法律家・政治家としての駆け出し時代を経て、小児麻痺(ポリオ)という壊滅的な試練に直面し、そこから屈せず大統領候補へと上り詰めるまでの軌跡を、エレノア・ルーズヴェルトとの複雑な夫婦関係も含めて余すところなく描く。
壊滅的な試練さえも乗り越えた不屈の意志と、比類なき政治的魅力の源泉を探る大統領伝記の古典。
アメリカのノンフィクション作家・歴史研究者。伝記や文化史に関する著作が多い。
20世紀における文化と技術の変容を多角的に論じた知的エッセイ集。自然、歴史、言語、芸術、人間の進化という五つの領域を横断しながら、テクノロジーが人間の価値観や思考様式をいかに根本から変えてきたかを考察する。カオスの新科学、コンピュータ・アート、バコン流経験主義など20世紀の知的革命を縦横に論じ、現代人が「天窓を通り抜けて消えていく」ように伝統的な自然観・文化観から遠ざかる過程を活写する。フォルジャー・シェイクスピア図書館館長を務めた著者が、文学研究者の目と科学への深い関心を組み合わせて描き出した刺激的な文明論。
人類はいま、天窓を通り抜けるように、自らが育んできた文化の外へと消えていこうとしている――そのことに気づいている者はほとんどいない。
アイルランドの村や都市を舞台に、孤独・愛・喪失を生きる女性たちの姿を描いた12編の短編集。魔法幻灯(ランタン)のように過去の記憶が浮かび上がる構成のなかで、オブライエンは饒舌でありながら痛切な語り口で、慕情・家族の軋轢・社会の噂話・アイルランドの地と文化への郷愁を鮮やかに照らし出す。村の奇人たちを連ねた冒頭と、ダブリンのパーティーでの人間模様を描く表題作に挟まれた各編は、いずれも満たされぬ欲望と諦念のなかで人々が「ただ持ちこたえている」姿を静かに映し出す。
秘密をはらんで静かに脈打つ物語たち――魔法幻灯の灯が照らすのは、アイルランドの人々の内なる渇望と孤独の断片だ。
アイルランド出身の小説家。女性の内面や家族関係を繊細に描く作風で知られる。
11世紀カスティーリャの伝説的な戦士エル・シッド(ロドリーゴ・ディアス)の生涯を、神話と歴史的事実の間で丹念に読み解いた伝記的研究。史料を精査することで、敬虔なキリスト教の国民的英雄という通説的イメージを批判的に検討し、イスラム君主に傭兵として仕えた複雑な歴史上の人物像を明らかにする。中世スペインの政治・宗教・文化の動乱を背景に、英雄伝説がいかに形成されたかを解き明かす一冊。
神話と伝説に覆われた英雄の歴史的実像に迫り、レコンキスタを生きた一人の人間の姿を鮮やかに描き出す。
中世スペイン史を含むヨーロッパ中世史の研究者。史料に基づく詳細な歴史著作で知られる。
ミネソタ州メサビ鉄山地帯(アイアンレンジ)での少年時代を詩と散文詩で描く詩集。「巨人」「子ども」「少年」という繰り返し登場する象徴的な人物を通じ、父と子の日常的な関係をおとぎ話のような輝きで描き出す。採掘の町の記憶、自然の細部、家族の場面が鮮やかなイメージとともに積み重なり、人が土地に根ざして生きることの意味を深く問いかける。
採掘の町の記憶と自然の細部が重なり、父と子の絆を神話のような深みで描く詩集。
自然や地域を題材にした詩作で知られるアメリカの詩人。
ジョナス・ソーク博士がいかにしてポリオワクチンを開発し、1954年に史上最大規模の臨床試験を成功させたかを詳細に描いたノンフィクション。20世紀前半にアメリカを恐怖に陥れたポリオの流行から、国立小児麻痺財団(マーチ・オブ・ダイムズ)の組織的な支援、そして「太陽の特許は誰のものか」という問いが示す知識の公共性をめぐる問題まで、科学と社会の交差点を丁寧に描き出す。受賞から没後に至るソーク博士の業績と、それを支えた無数の人々の物語でもある。
ソーク博士は「太陽の特許は誰のものか」と問い、ワクチンの特許を取得しなかった。その選択が示す科学の公共性を、スミスは生き生きとした筆致で描く。