国際アラブ小説賞
こくさいあらぶしょうせつしょう
アラビア語で出版された長編小説に贈られる国際的な文学賞。通称「Arabic Booker」。
- 創設年
- 2008
- 主催
- Booker Prize Foundation(ロンドン)/資金提供: Abu Dhabi Department of Culture & Tourism (DCT)
- カテゴリー
- 一般文芸・大衆小説
- 選考方式
- 推薦
- 受賞対象
- プロ
- 開催頻度
- 年1回
- 締切時期
- 6月頃
- 発表時期
- 4月頃
- 賞のステータス
- 活動中
説明
International Prize for Arabic Fiction(IPAF)は、アラビア語で出版された長編小説の優秀作を顕彰し、受賞作やノミネート作の翻訳・出版を通じてアラビア語文学の国際的な読者層を拡大することを目的とした賞で、Booker Prize Foundation(ロンドン)が運営、Abu Dhabi Department of Culture & Tourism が資金提供している。2008年に創設され、受賞者には賞金が授与されるほか、IPAF Nadwa(作家ワークショップ)などの関連イニシアティブも支援している。
賞品
- 主賞品
- 受賞者には賞金と翻訳・出版等の支援が提供される。受賞者はUS$50,000、ショートリスト入りした6名にはそれぞれUS$10,000が授与される。
- 賞金
- 50,000 USD
- ショートリスト各賞金: US$10,000(各6名)
- 受賞作・ノミネート作の翻訳・出版支援およびプロモーション
- IPAFによる作家支援プログラム(例:Nadwaワークショップ)
選考情報
選考プロセス
| 段階 | 審査員 | 通過率 | 発表 |
|---|---|---|---|
| Longlist(ロングリスト) | 年ごとに任命される国際審査員パネル(文学者・批評家・翻訳者など、メンバーは毎年変更) | 約10〜15%(例: 長リスト16点/100〜130件の応募) | 主に前年末〜年明け(11月〜1月)に発表されることが多い |
| Shortlist(ショートリスト) | 同上の審査員パネルにより選定 | 約4〜6%(例: ショートリスト6点/応募総数に対して) | 主に1〜2月頃に発表される |
| Winner(受賞作決定) | 審査員パネルの最終投票または合意による決定 | 約1%前後(例: 1点/総応募数) | 主に3〜5月に発表(Abu Dhabi International Book Fair前後の年もある) |
選考基準
- 文学的優秀性(文体・表現の質)
- 構成・物語性・独創性
- テーマの普遍性・文化的重要性
- 登場人物の深掘り・物語の完成度
- 翻訳や国際的読者への訴求力(翻訳可能性)
- 作品の出版状況・刊行の完成度(編集の整備)
応募のヒント
推奨
- 応募規程(Rules of Entry)を公式サイトで必ず確認する
- 出版社を通じて正式に応募する(出版社の推薦が必要な場合が多い)
- 提出前に原稿の校正・編集を徹底して作品の完成度を高める
- 出版情報やライツ情報を正確に添付する
- 締切日・発表時期を事前に確認し余裕を持って準備する
注意
- 締切を過ぎての提出や不完全な書類での応募を行わない
- 応募規約に反する形式(例:適格でない出版形態)での提出をしない
- 作品の権利関係や著作権表示を曖昧にしたまま提出しない
審査員から
- 文学的な独創性と文体の質を重視すること(斬新な視点・語りが評価される)
- 登場人物の深みと物語の一貫性を大切にすること
- 翻訳や国際的読者を念頭に置いた読みやすさ・表現の明確さも有利になる
- 応募前に必ず刊行物としての完成度(校正・版面・メタデータ)を整える
関連の賞
- Booker Prize(Booker Prize Foundation関連)
- Sheikh Zayed Book Award
- Abu Dhabi International Book Fair
- International Prize for Arabic Fiction Nadwa(IPAF Nadwa:作家ワークショップ)
公式情報
http://www.arabicfiction.org/過去の受賞者
ラマッラーの難民キャンプで暮らす考古学者ヌールが、拾ったイスラエル人の身分証をきっかけに別人として生き始める物語。占領下の現実と個人の内面を重ねながら、歴史と記憶、所属の不確かさを鋭く描く。
借り物の身分が、封じられた過去と占領下の現在をつなぎ直していく。
パレスチナの作家。社会・政治を題材にした作品で評価され、2024年に『空の色の仮面(A Mask, the Colour of the Sky)』で本賞を受賞した。
オマーンの村で、地下水脈を探し当てる役目を担う男を主人公にした物語。水の欠乏と伝承、恐れと敬意が交差するなかで、共同体の暮らしと自然環境の結びつきを静かに掘り下げる。
水を探す仕事が、村の記憶と土地の歴史を浮かび上がらせる。
オマーンの作家。詩的で文化的な題材を扱う作品で知られ、2023年に『水占い師(The Water Diviner)』で国際賞を受賞した。
リビアの小さな共同体で、男らしさの規範にうまく馴染めないミラードの生を描く物語。パン作りと家庭の役割を通して、性別役割への圧力と個人の自由をめぐる葛藤を浮かび上がらせる。
焼きたてのパンの匂いのなかで、男らしさをめぐる古い規範が揺らいでいく。
リビアの作家。家族や社会規範を扱った作品で注目され、2022年に『ミラードおじさんの食卓のパン(Bread on Uncle Milad's Table)』で国際賞を受賞した。
書店主イブラヒムがホームレスの人々と暮らし、読んだ小説の登場人物になぞらえて生き直そうとする物語。
ヨルダンの作家。地域社会や日常の細部を通して人間関係を描く作風で知られ、2021年に『本屋の手記(Notebooks of the Bookseller)』で本賞を受賞した。
アルジェの5人の人物を、1815年から1833年までのオスマン支配からフランス侵攻へ移る時代の中で追う歴史小説。
アルジェリアの作家。歴史や権力構造を鋭く描く重厚な作風で知られ、2020年に『スパルタの法廷(The Spartan Court)』で国際賞を受賞した。
戦争と移動、通信と喪失が重なり合うなかで、郵便と手紙のモチーフが静かな緊張を生む小説。
戦争と移動、通信と喪失が重なり合うなかで、郵便と手紙のモチーフが静かな緊張を生む小説。
レバノン出身の小説家。戦争とその余波、亡命や個人の喪失を繊細に描く作風で国際的に評価され、2019年に『夜の郵便(The Night Mail)』で本賞を受賞。
近未来の名もなき社会を舞台に、権力と技術が人間の顔や倫理をゆがめていくディストピア小説。かつて他者を排除してきた社会が、やがて自分とよく似た者までも消し去ろうとする不気味な循環を、寓話的な想像力と黒いユーモアで描く。
他者を消し終えた社会は、やがて自分と同じ顔をした者を敵にし始める。
パレスチナ出身(ヨルダン拠点)の小説家。歴史や社会を背景にした群像劇で知られ、2018年に『犬の第二の戦争(The Second War of the Dog)』で国際賞を受賞。
個人の喪失と内面の変容を繊細に描き出す長編。日常の細部と心理的動揺を通じて生と死、孤独と回復の過程を追い、詩的で沈静な語り口で登場人物の存在感を浮かび上がらせる作品である。
個人の喪失と内面の変容を繊細に描き出す長編。
サウジアラビアの小説家。詩的で繊細な文体による心理描写に定評があり、2017年に『A Small Death』で同賞を受賞した。
ホロコーストとナクバという二つの歴史的悲劇を対照させながら、記憶、トラウマ、和解の可能性を問う長編。複数の視点を横断し、歴史の語り直しに踏み込む。
二つの悲劇を対照し、記憶と和解を問い直す。
パレスチナ出身の作家・評論家。歴史と記憶を主題にした作品で知られ、2016年に『Destinies: Concerto of the Holocaust and the Nakba』で同賞を受賞した。
チュニジアの近現代史を背景に、家族史と国家史が交差する長編。個人の記憶と政治的出来事が絡み合い、抑圧や移行期の混乱を通して国の傷痕を描く。
家族史と国家史が重なる、チュニジア小説。
チュニジアの作家。近現代史と個人の記憶を交錯させる作品で知られ、2015年に『The Italian』で同賞を受賞した。
戦渦のバグダッドで遺体の断片をつなぎ合わせて生まれた存在が街に現れ、暴力と復讐の連鎖を引き起こす寓話的長編。戦争下の倫理や責任、集合的記憶をブラックユーモアと悲哀を交えて問い直す作品である。
イラク出身の作家。戦争や暴力を社会寓話的に描くことで国際的評価を受け、2014年に『Frankenstein in Baghdad』で同賞を受賞した。
クウェートとフィリピンを舞台に、混血の青年が自らの出自と居場所を模索する物語。移民問題、差別、家族の絆をリアルに描写し、国籍や帰属の意味を問い直す社会派長編である。
クウェートの作家。社会問題やアイデンティティを扱った作品で知られ、若手作家として国際的な注目を集めた。2013年の受賞作は移民と出自の問題を鋭く描く。
民族・宗教的境界と移動の歴史を背景に、記憶とアイデンティティを探る長編。複数の時代と場所を行き来する語りで個人史と共同体史が交差し、過去の傷とその継承を深く描写する作品。
レバノンの小説家。歴史と記憶を主題にした作品で知られ、複雑な時代背景と個人史を織り交ぜる作風が評価されている。2012年に同賞を受賞した。
複数世代にわたる家族と国家の物語を通じて、記憶と政治的変動が個人の運命にどう影響するかを描く長編。歴史の記憶、贖罪、再生のテーマが重層的に扱われ、社会的責任と個の選択を問いかける構成となっている。
モロッコの作家。詩や小説で知られ、歴史や個人の記憶をテーマにした作品群で高く評価されている。2011年は共同受賞者の一人となった。
メッカを舞台に都市の多層性を描く長編。聖地の表と裏を往還する視点から、女性や宗教、近代化の衝突を描き出す。幻想的な描写と都市の記憶を通じて社会的制約や個の声を浮かび上がらせる力作。
サウジアラビアの小説家。都市や女性の視点を通じて社会の矛盾を描く作家として国際的に注目され、2011年に共同受賞した。
抑圧的な社会環境下で生きる人々の衝突と反発を描く長編。日常の小さな行為が連鎖し、個人の選択や欲望が社会構造と交錯する様を通じて、権力・倫理・自由の問題を問いかける。鋭い社会観察と心理描写が特徴の作品。
サウジアラビアの小説家。現代社会の矛盾や個人の内面を鋭く描く作風で知られ、2010年に『Throwing Sparks』で同賞を受賞した。
古代中東の宗教的背景を舞台にした歴史小説。主人公の回想を通じて信仰や教義の対立、異端の扱いと個人の葛藤を描き、宗教的権威と人間の矛盾を浮かび上がらせる。歴史と宗教、アイデンティティに関する深い省察が展開する。
古代中東の宗教的背景を舞台にした歴史小説。
エジプトの作家で研究者としての顔もあり、宗教史や思想を題材にした重層的な長編で知られる。2009年に『Azazeel』で同賞を受賞した。
砂漠のオアシスを象徴的舞台に、伝統と近代化の狭間で揺れる人々の運命を描く長編。家族や共同体の絆、喪失と再生が静謐な筆致で綴られ、地域社会の歴史的変動が個々人の生活に及ぼす影響を丁寧に掘り下げる作品。
砂漠のオアシスを舞台に、伝統と近代化の狭間を描く長編。
エジプトの小説家。現代アラブ文学を代表する作家の一人で、社会や歴史を背景にした人間描写に定評がある。2008年に同賞初回の受賞者となった。