ベスト翻訳本賞
べすとほんやくほんしょう
英語への翻訳作品(フィクションと詩)の優れた翻訳を表彰するアメリカの文学賞。2008年創設、2020年を最後に無期限休止中。
- 創設年
- 2008
- 主催
- Three Percent(Open Letter Books / University of Rochester)
- カテゴリー
- 研究・翻訳・学術
- 選考方式
- 公募
- 受賞対象
- 不問
- 開催頻度
- 年1回
- 発表時期
- 5月頃
- 賞のステータス
- 終了
説明
Best Translated Book Awardは2008年に創設された米国の文学賞で、フィクション部門と詩部門それぞれの前年に出版された英訳作品の優秀な翻訳を表彰した。Three Percent(Open Letter Books/University of Rochester)が運営し、毎年ロングリストとショートリストが発表された。翻訳の質だけでなく原著、翻訳者、編集者、出版社を含む出版物全体の出来映えが評価対象となる。2010年にAmazon.comの助成により賞金が導入され、以降は受賞者に賞金が支払われた。2020年が最終授与年で、2021年以降は継続的休止(hiatus)となっている。
賞品
- 主賞品
- 各部門の受賞に対する賞金。公式には1受賞あたり$5,000(Amazonの助成以降)。一部の年では翻訳者と原著者がそれぞれ受け取る形式がとられた。
- 賞金
- 5,000 USD
- ロングリスト/ショートリスト掲載による露出
- 受賞発表イベントでの紹介
- 出版社や翻訳コミュニティでの認知向上
選考情報
選考プロセス
| 段階 | 審査員 | 通過率 | 発表 |
|---|---|---|---|
| ロングリスト(Longlist) | Three Percent編集部およびノミネート(初期には読者投票等の要素もあり) | 不明 | Three Percent公式サイトおよびbesttranslatedbook.orgで発表 |
| ショートリスト(Shortlist) | 選考委員会(編集者・翻訳者・作家・批評家等) | 不明 | 公式サイトおよび関連メディアで発表 |
| 最終選考・受賞発表(Winner) | 最終選考委員会(Three Percent関係者やゲスト審査員) | 不明 | 公式サイトおよび授賞イベントで発表(例:PEN World Voicesなど) |
選考基準
- 翻訳の文学的・言語的質
- 原著作品の文学性
- 翻訳と原著との整合性(声・トーンの再現)
- 編集・校閲・出版物としての総合的完成度(装丁等を含む)
- 英語圏読者への伝達力(可読性)
応募のヒント
推奨
- 翻訳原稿は入念に校正し、英語の可読性と原文のトーンを両立させる
- 翻訳者・原著者・出版社のクレジットや版情報を明確に記載する
- 提出フォーマットや締切など主催者の要項に厳密に従う
- 出版社や編集者と連携し、出版物としての仕上がり(校閲・装丁等)を整える
注意
- 未校正・未編集の状態で提出すること
- 翻訳者情報や権利関係を不明瞭にすること
- 主催者の提出要件(形式・期限)を無視すること
審査員から
- 翻訳は原文の声を再現しつつ英語で自然に読めることが重要
- 翻訳の技術的正確さだけでなく作品全体の文学性・編集の仕上がりを重視する
- 注釈や脚注は必要最小限にとどめ、本文の流れを損なわないようにする
関連の賞
- PEN Translation Prize (PEN America)
- International Booker Prize
- National Translation Award (US)
- Oxford–Weidenfeld Translation Prize
- PEN/Heim Translation Prize
公式情報
http://besttranslatedbook.org/過去の受賞者
病にある主人公が、自身の記憶と20世紀の暴力の記録を往復しながら、歴史の残響を掘り起こしていく終章的な長編。個人史、精神医学的な回想、戦争と民族浄化の痕跡が断片的に重なり合い、忘却に抗うための執拗な言葉の力が前面に出る。
記憶は慰めではなく、忘却に抵抗するために掘り起こされるものになる。
クロアチアの作家。歴史的記憶、トラウマ、戦争の影響を題材にし、断片的な語りと資料性の高い手法を交えた作品で知られる。
フランス語で書かれた詩を軸に、時間、記憶、戦争、愛が非線形に絡み合う詩集。ひとつの瞬間から歴史全体へと視野を広げる構成で、日常の感覚と哲学的な思考が同じ流れのなかに置かれる。
ひとつの瞬間が、やがて歴史全体を含みこむ広がりへと変わっていく。
レバノン出身の詩人・随筆家・画家。複数言語で執筆し、政治・時間・風景・亡命をテーマにした詩作で国際的に評価された。
マルティニークのプランテーションから逃げ出した老いた奴隷と、彼を追う主人と猟犬の追跡を描く、濃密で詩的な中編小説。植民地支配の暴力を直視しながら、森の異様な生命力や神話的な語りを通して、自由への衝動と生の尊厳を浮かび上がらせる。
逃走の先にあるのは自由だけではない。森そのものが、記憶と抵抗を語り始める。
マルティニーク出身の作家。クレオール文学や植民地主義に関する作品で知られ、口語的でリズミカルな語り口が特徴。地域の歴史やアイデンティティを深く掘り下げる。
死を愛人のように呼び寄せる感覚を軸に、生と死の境界を凝視するミニマルな詩集。簡潔でありながら濃密な言葉の運動のなかに、官能性、霊性、遊び心が同居し、ヒルダ・ヒルストの詩人としての核心を鮮やかに伝える。
死は終着点ではなく、詩のなかで何度も呼び直される相手になる。
ブラジルを代表する詩人・作家。前衛的かつ実験的な詩作で知られ、性愛、死、宗教性といった深い主題を鋭く探求する作品群が評価される。
老いた作家が、文学の現状に失望しながら現実から姿を消そうとするところから始まる、記憶と創作の長大なメタフィクション。フィッツジェラルドやピンク・フロイド、映画や神話を自在に呼び込みながら、実在と虚構の境界を揺さぶり、語り直すことそのものの力を描く。
現実を消し、物語を書き換えるために、作家は自分の人生そのものを解体する。
アルゼンチン出身の小説家。メタフィクション的で実験的な作風、文学や映画への豊富な参照を特徴とし、ラテンアメリカ現代文学で広く知られる。
1950年代から60年代にかけて書かれた六つの長詩を束ねた、抒情の形式を問い直す詩集。イメージの連鎖や行分けの間合い、言葉のゆらぎを通じて、風景と身体、記憶と時間の関係を静かに掘り下げる。
抒情を越えたところで、詩はイメージと時間の輪郭を描き直す。
ギリシャの詩人。近代ギリシャ詩における重要な詩的実践を行い、抒情性と言語の実験性を併せ持つ作品で知られる。
Lucio Cardosoによる『Chronicle of the Murdered House』。FamiliesやGay menを軸に、階級まで射程に入れる回想録。
Familiesのなかで、Gay menが立ち上がる。
Alejandra Pizarnikによる『Extracting the Stone of Madness』。詩や人間関係を軸に、歴史まで射程に入れる詩集。
詩のなかで、人間関係が立ち上がる。
雨の降り続く孤立したハンガリーの集落を舞台に、停滞した共同体へ帰還した人物をきっかけとして、欺瞞、金銭、支配、裏切りが連鎖していく長編小説。終末的な閉塞感の中で、人々の期待と破綻がじわじわと露わになる。
閉ざされた村に、救済の約束だけが不穏に広がっていく。
ロマニアの詩人ニキータ・スタネスクの代表作群を英語で初めてまとまって読める詩集で、天使や神秘的な力、日常の手触りが交差しながら、愛と真理への問いが立ち上がる。鮮烈なイメージと哲学的な緊張が同居する。
日常が、思考の飛躍に触れるたびに別の光を帯びる。
ポーランドの農村を舞台に、語り手シメクが家族、共同体、戦争、労働、恋愛、喪失の記憶をたどる長編小説。個人の回想が土地と歴史の重みにつながり、静かな語り口の中に厚みのある人生の手触りが立ち上がる。
土地に根ざした記憶が、ひとりの人生を静かに掘り起こしていく。
日本語と英訳を対照させながら、連想の飛躍や断片的なイメージを重ね、性、喪失、記憶、身体感覚をめぐる詩の運動を立ち上げる詩集。即興性と強い言語感覚が前面に出た、挑発的で実験的な一冊として読める。
詩そのものを舞台に変えるような、鋭く自由な連作。
スウェーデン語原作の小説。孤独な島の暮らしの中で、ふたりの女性の関係が欺瞞と支配、愛情と反発のあいだで揺れ動く。
欺瞞と支配が交錯する、冷たい島の物語。
スロベニアの詩人アレシュ・シュテーゲルによる詩集。日用品や身近な事物を起点に、思考とイメージを詩へ変換する。
日用品を詩へ変える、スロベニア詩の英訳集。
イスラエルを舞台に、ひとりの女性が長年の執着と向き合いながら自分の人生を掘り下げていく恋愛小説。
欲望の正体を見つめ直し、愛のかたちを静かに問い直す。
ポストソ連ロシアの断片化した現実を、政治的な鋭さと私的な痛みを重ねながら描く詩集。
社会のざわめきの中で、個人の声を消さずに響かせる。
Tranquility は、家族と孤独、抑圧の下の生 を通して 長編小説 としての読み応えを示す作品。
家族と孤独、抑圧の下の生 を軸に、静かな余韻を残す。
For the Fighting Spirit of the Walnut は、日常の感覚と言葉の跳躍 を通して 詩的作品 としての読み応えを示す作品。
日常の感覚と言葉の跳躍 を軸に、静かな余韻を残す。
収容所グアンタナモを背景に、名前を奪われた人々の不確かさと暴力を冷静に描く小説。政治的現実の圧力を、抑制された文体でじわじわと浮かび上がらせる。
名前を失ったとき、人はどこまで自分でいられるのか。