ヘレンとカート・ヴォルフ翻訳賞
へれん と かーと うぉるふ ほんやくしょう
ドイツ語から英語への優れた文学翻訳を顕彰する年次賞。受賞者には賞金5,000米ドルとフランクフルト・ブックフェアへの招待旅行が贈られる。
- 創設年
- 1996
- 主催
- Goethe-Institut New York(管理);資金提供:Friends of Goethe New York
- カテゴリー
- 研究・翻訳・学術
- 選考方式
- 選考
- 受賞対象
- プロ
- 開催頻度
- 年1回
- 発表時期
- 6月頃
- 賞のステータス
- 活動中
説明
Helen and Kurt Wolff Translator's Prizeは、ドイツ語から英語への優れた文学翻訳(前年に米国で出版された作品)を顕彰する年次賞。1996年に設立され、受賞翻訳者には10,000米ドルが授与される。設立当初はGoethe‑Institut Chicagoが運営し、2015年以降はGoethe‑Institut New Yorkが管理している。資金はドイツ連邦政府が提供している。
賞品
- 主賞品
- 受賞翻訳者に対する賞金
- 賞金
- 10,000 USD
- 名誉・認知
選考情報
選考プロセス
| 段階 | 審査員 | 通過率 | 発表 |
|---|---|---|---|
| ノミネーション / 応募 | 出版社や関係者からの提出(詳細は公式要項に従う) | — | — |
| 審査(選考委員会) | Goethe‑Institutが任命する選考委員会 | — | 受賞者は例年5月頃に発表される |
選考基準
- ドイツ語から英語への翻訳であること
- アメリカ合衆国で前年に出版された作品であること
- 翻訳の文学的完成度(文体、読解性、原文への忠実さ)
応募のヒント
推奨
- 応募要件を事前に確認する(ドイツ語→英語、米国で前年に出版された作品であること)
- 出版社と書誌情報(ISBN、刊行日など)を明記する
- 翻訳の文学的完成度を示す(文体・語感・訳注など)
- 公式の提出形式・締切に厳守する
注意
- 未出版または応募資格を満たさない作品を提出しない
- 機械翻訳をそのまま提出しない
- 提出要項を満たさない形式で送付しない
審査員から
- 原文への忠実さと英語での読みやすさのバランスを重視する
- 作品全体のトーンや文体を再現する訳語選択が評価される
- 必要に応じて訳者ノートで重要な判断を説明すると良い
関連の賞
- PEN Translation Prize
- National Translation Award (US)
- Schlegel-Tieck Prize
公式情報
https://www.goethe.de/ins/us/en/kul/bks/hkw.html過去の受賞者
マックス・チョレックの本作は、21世紀におけるユダヤ人のアイデンティティと連帯について鋭く論じる論考集で、同化や排外主義への批判を通じて新たな政治的実践や共同体の可能性を提示する。
ドイツ語から英語への翻訳を手がける翻訳者。2024年にマックス・チョレックの『De-Integrate: A Jewish Survival Guide for the 21st Century』英訳で受賞。
ハイミト・フォン・ドデラーの『The Strudlhof Steps』はウィーンを舞台に、都市の変遷や人間関係、記憶の断片を豊かに描く長編。社会的変容と個人の内面が複雑に交差する重厚な作品である。
ドイツ語文学の英訳で知られる翻訳者。2022年はハイミト・フォン・ドデラーの『The Strudlhof Steps』英訳で受賞。
ユディット・シャランスキーの『An Inventory of Losses』は、消えた場所や忘れられた物語を独創的に編んだエッセイ集。記憶と喪失をめぐる歴史的・美術史的考察が交差し、喪失の意味を鋭く再考する作品。
英語への文学翻訳を行う翻訳者。2021年にユディット・シャランスキーの『An Inventory of Losses』英訳でHelen & Kurt Wolff Translator's Prizeを受賞。
クリスティーネ・ヴンニッケの『The Fox and Dr. Shimamura』は、文化的な衝突や他者性を巡る物語で、日本的要素を思わせるモチーフと西洋の視点が交錯する。個人の孤独や倫理的な問いを扱う短・中篇的作品。
ドイツ語文学の英訳で知られる翻訳者。2020年はクリスティーネ・ヴンニッケの『The Fox and Dr. Shimamura』英訳で受賞。
Uwe Johnsonの本作は、主人公ゲジネ・クレスパールの人生と記憶を断片的に追い、歴史的出来事と個人の経験が交錯する長編。亡命やアイデンティティ、時代の揺らぎを重層的に描く大作である。
英語圏でドイツ語文学の翻訳を手がける翻訳者。2019年にウーヴェ・ヨンソン(Uwe Johnson)の『Anniversaries. From the Life of Gesine Cresspahl』英訳で受賞。
ヴォルフガング・ヒルビヒの『Old Rendering Plant』は、廃工場や周辺風景を通じて東ドイツ的な記憶と身体性、社会の異化を詩的かつ暗いイメージで紡ぐ断片的な作品。孤独と抑圧が重層的に表現される。
ドイツ語作品の英訳を行う翻訳者。2018年にヴォルフガング・ヒルビヒの作品の英訳(Old Rendering Plant)で受賞。
ロベルト・ゼータラーの『A Whole Life』は、アルプスの谷で慎ましく生きる男の一生を静謐に描く小説。喪失や孤独、日常の尊さを淡々と描写し、人生の不確かさと美しさを繊細に映し出す作品。
ドイツ語文学の英訳を手がける翻訳者。2017年はロベルト・ゼータラーの『A Whole Life』の英訳で受賞。
クリスティアン・クラフトの『Imperium』は、植民地的野望やユートピア的幻想を背景に、カリスマ的指導者とその追随者が織りなす虚栄と破滅を皮肉な筆致で描く長編。植民地主義や偶像化の危うさを問う作品。
ドイツ語から英語への文学翻訳を手がける翻訳者。2016年にクリスティアン・クラフトの『Imperium』英訳でHelen & Kurt Wolff Translator's Prizeを受賞。
ヒューゴ・バルの初期小説『フラメッティ』の英訳。芸術と貧困、ダンディズムに関する自伝的要素と実験的語りが交錯し、ダダ的感性の萌芽を示す作品。翻訳は原文のユーモアと風刺を丁寧に再現している。
(詳細不明)翻訳者。ヒューゴ・バルの作品の英訳により受賞。
ライナー・シュタッハによるカフカ評伝の英訳。作家の形成期と重要な著作群を緻密な研究に基づき分析し、カフカ研究に新たな視座を与える。訳は学術的精度と可読性を両立している。
ドイツ語圏文学の英訳で知られる翻訳家。研究書や伝記の訳業にも定評がある。
グレゴール・フォン・レッゾーリの回想的テクストの英訳。東欧の没落した社会やユーモアと哀惜が混在する語りを通じて、個人と歴史の記憶を描く。翻訳は原作の皮肉と叙情を生かしている。
翻訳者であり劇作家・演出家としても活動。東欧文学の英訳や舞台翻訳で知られる。
ゲルハルト・マイヤーの長篇の英訳。死と記憶、風景と内面が交錯する叙事で、抑制された文体が心理的深みを生む。翻訳は原文の象徴性と静謐な調子を英語読者に伝える。
ドイツ語文学の翻訳者・研究者。批評・翻訳の両面で長年にわたり活動している。
ゲルト・ヨンケの作品の英訳。遠くから届く音やその残響を主題に、断片的かつ詩的な語りで意識の層を横断する作風が特徴。訳は原文の音響的要素や実験的構造を伝えている。
(詳細不明)英訳を手がける翻訳者。ゲルト・ヨンケ作品の英訳で受賞。
マイケル・マーのナボコフ研究書の英訳。ナボコフの文体や言語遊び、テーマを精緻に分析し、作品と作家の関係を批評的に検証する一冊。翻訳は学術的正確性と読みやすさを兼ね備えている。
英語圏で活動する翻訳者。学術書や文学作品の翻訳で知られる。
マイケル・クリューガーによる手紙体の作品の英訳。書簡のやりとりを通じて風刺とユーモアを交え、文学と人生の虚実を探る軽妙な語りが展開される。翻訳は語感とユーモアを英語で蘇らせる役割を果たす。
(詳細不明)英語への翻訳を手がける翻訳者。該当年にマイケル・クリューガー作品の翻訳で受賞。
モーゼス・ローゼンクランツによる自伝的断章の英訳。幼少期の記憶や家族の断片を通じて個人的歴史と文化的背景が交錯する詩的な断章集で、翻訳は内省的なリズムを保持している。
ドイツ語作品の英訳を手がける翻訳者。自伝的要素の強い作品の訳出などで知られる。
ベンヤミン・レバートの作品の英訳。青年期の混乱やアイデンティティの模索を独白的な語りで描き、ユーモアと哀愁が交錯する。翻訳は原作の語り口と比喩を生き生きと英語に移している。
英語圏で活動する翻訳者。ドイツ語ほか多言語の文学作品の翻訳で知られる。
ジェニー・エルペンベックの短編集。家族や喪失、記憶の断片が静謐かつ冷徹な筆致で綴られ、個人史と社会的変容が交錯する短篇群を収める。翻訳は原文の繊細な語感と抑制された感情を英語に忠実に再現している。
アメリカの翻訳者。ドイツ語文学の英訳で知られ、現代ドイツ語作家の作品翻訳を多数手掛ける。
『ヴェニスに死す』は老作家アッシェンバッハがベニスで青年タージオに魅せられ、欲望と理性、衰弱と美の対立が破滅へと導く寓意的作品。芸術家の孤独や美学と倫理の緊張が主題となっている。
ドイツ語文学の英訳で著名な翻訳家。トーマス・マン等の作品の英訳で知られる。
『Morenga』はウーヴェ・ティムによる歴史小説で、ドイツ植民地時代の南西アフリカを舞台に、反乱指導者ジャコブ・モレンガを中心に植民地主義の暴力と抵抗、歴史的正義の問題を問い直す重層的な物語である。
ドイツ語文学の英訳を行う翻訳家。歴史小説などの英訳で知られる。
『Summerhouse, Later』(原題:Sommerhaus, später)はユディット・ヘルマンの短篇集で、都会の日常に潜む孤独や関係の断片を抑制の効いた文体で描く。静かな余韻と未解決の感情を残す短編群である。
ドイツ語から英語への文学翻訳者。現代ドイツの短編や小説の英訳を手がける。
『アウステルリッツ』はW. G. セバルトの長篇で、主人公が自己の過去をたどるうちに幼年期の分離やホロコーストの記憶が浮かび上がる。写真や断片的記述を織り交ぜた独特の語りで、記憶と歴史の関係を静かに掘り下げる作品。
英国出身の著名な翻訳家で、多くのドイツ語作品を英語に訳している。洗練された語感で知られる。
『Too Far Afield』はギュンター・グラスの作品で、個人的記憶と歴史的責任、戦後ドイツにおける罪意識や世代間の断絶をテーマとする。記憶の曖昧さと個人の罪責が文学的に探究される作品である。
ドイツ語文学の英訳を行う翻訳家。ギュンター・グラスなどの作品の英訳で知られる。
『Rebellion』はヨーゼフ・ロートの作品で、戦間期やその周辺の動乱を背景に個人の疎外や社会への反発を描き出す。時代の変化と個々人の喪失感、抵抗のあり方を通じて歴史の影響を問いかける小説である。
詩人でもあり、ドイツ語文学の英訳で高い評価を受ける翻訳家。ヨーゼフ・ロートなどの作品を英訳している。
『Penthesilea』はハインリヒ・フォン・クライストの戯曲で、アマゾンの女王ペンテシレイアとギリシア兵士との激しい愛憎と闘争を描き、愛と暴力、理性と本能の対立を極端な形で表現する古典悲劇である。
古典ドイツ文学の英訳を手がける翻訳家。戯曲や古典作品の翻訳で知られる。
『Heroes Like Us』(原題:Helden wie wir)は、東ドイツという特殊な社会を風刺的に描き、若者の日常や国家の不条理、アイデンティティの揺らぎをユーモアを交えて描写する作品。政治的変動と個人の成長が絡み合う物語。
主にドイツ語文学の英訳を行う翻訳家。風刺的・社会批評的な作品の英訳でも知られる。
『ヤコブ・リーバー』は第二次世界大戦中のユダヤ人ゲットーを舞台に、主人公ヤコブが人々に希望を与えるために架空の戦況ニュースを流すことで共同体に慰めと欺瞞をもたらす物語。ユーモアと悲劇が混在し、生存と倫理の葛藤を描く。
ドイツ語文学の英訳で知られる翻訳家。ユレク・ベッカーなど東欧・ドイツ語圏作家の翻訳を手がけた。
『魔の山』は第一次世界大戦前のスイスの療養所を舞台に、若者ハンス・カストルプの長期滞在を通して時間感覚や病、愛、政治的討議が交錯する長篇小説。知識人たちの哲学的対話を通じて近代ヨーロッパの精神的変容と葛藤を描き出す。
ドイツ語文学を英語に翻訳する翻訳家。トーマス・マン作品などの英訳で知られる。